第9話 王都アヴァロン(1)

 なんか凄い重い話だったけど、一番良い解を選んだと思う。

 結局やることは、ゲーム攻略目指すだけ。

 あとは、クロイさんのクエストをたまに受ければいいぐらいだ。

 あまり気にせず、ゲームを楽しむか。


『そうよ。テンマは特別なの。最初にゲームをクリアするはテンマなのよ。さあ、どんどんゲームを進めなさい。私が付いてるわ! あっ、未読のメールがあるわよ』


 あっ、そういえばログインボーナスのメールが届いてたな。

 早速メールを見てみる。


 ——

 【ログインボーナス(リアル)】

 今日のログインボーナスは10万円です!

 大切に使ってくださいね。

 特にポーションは多めに買っておきましょう!


 添付:【10万円】

 ——


 へ? 10万円だとぉぉぉぉ!!

 ちょっと待て。ログインしただけで10万円もらえたのか。

 ノルン。このゲームの通貨はどうなっているんだ?

 日本の円にも変換できるんだよな!?

 

『テンマ、落ち着いて。このゲームの通貨は、プレイヤーの国籍の通貨になるの。日本人なら円。アメリカ人ならアメリカドルね。為替に合わせて商品の値段も1時間毎に調整されるわ。もっと簡単に言うと、テンマからするとゲーム内の通貨は全て円よ。ゲーム内の1円は、現実の1円になる。だから、現実の10万円もらったのと同じね』


 おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 すごい。凄すぎる。


『テンマ、お願いだから落ち着いて! ゲームを進めるとそれなりに出費もするんだからね』


 物価の安い国でこのゲームやるとどうなるんだ?

 毎日10万円相当のお金をもらえるなら、誰も働かないだろ。


『ログインボーナスで10万円もらえたのは、テンマが【リアル】だからよ。それに、物価の違いで経済に混乱がおきる地域では、通貨の変換比率を変えて対応しているの。このゲームは厳しい基準をクリアした国でしかできないのよ。その基準の中には、国家レベルでの協力も義務付けられているわ』


 そこまで協力しても、謎を解き明かしたときのメリットが国にはあるってことか。

 念のために聞くけど、その謎の答えをノルンは知らないんだよな?


『知らないわよ。テンマがゲームを攻略していけば、わたしにもデータが入ってくるわね。まあ、そんな大きな謎よりも、まずはこれからどうするかよ』


 ネットの情報だと、このゲームはフリーシナリオで、どの順番で何をやるかはプレイヤーの自由。

 シナリオはAIが、古今東西の神話や物語を参考に自動生成しているらしい。

 それでもちゃんとエンディングはあるらしく、最初にそこへ到達した者に1兆円の報酬が支払われると書いてあった。


 つまり【アカシックワールド】をどう遊ぶかはプレイヤーの自由なのだ。

 生産職になり商売してもいいし、ハンターとなり魔物を狩ってもいい。


 俺はダンジョンやミッションでレアアイテムを集めて、ひたすらにキャラ自分を強くして遊ぶつもりだ。

 クロイさんとの約束で、最初のゲーム攻略者になるのも俺の目標に追加されたけど、最強を目指すのを変える気は無い。

 お金は不要になったレアアイテムを売れば十分稼げるだろう。


 そろそろ待ち合わせの時間が近くなってきたか。

 ノルン。冒険者ギルドの場所わかるか?


『大丈夫よ。ここから歩いて10分ってところね』


 それなら大丈夫そうだな。

 さてと行くか。冒険者ギルドとかわくわくするな。


 俺はノルンに案内してもらい、冒険者ギルドへ向かった。


 ◇


 ――冒険者ギルドに着いた。

 それにしても、すごい人の数だ。みんな冒険者なのか?

 そろそろ電話するか。

 そう思っているとあっちから1人の男がやってきた。


「兄貴! ミドリさんはまだ来てないのか?」


「おまえ、アキラか? 今回もごっついアバターにしたんだな。ん? ……なんで俺だってわかったんだ?」


「……ボケてるわけじゃないんだよな? 兄貴のアバターって、リアルそのままだろ。キャラメイクのときに似せて作ったんじゃないの?」


 ……へ?

 ちょっと待て。何言ってるんだ。

 そういえば、俺はキャラメイクなんかしてないぞ。

 ノルン! どうやったら自分の姿を見られるんだ。


『テンマなら、その辺の窓とかに自分の顔が映るんじゃない?』


 俺は慌てて冒険者ギルドの壁面に並ぶ窓の前へ行く。

 そして窓ガラスに反射する自分の顔を見る。

 そこには、ログアウトしたときに見た自分の姿が映っていた。


「兄貴……もしかして、気づいてなかったのか? キャラメイクをスキップしたとか、何か身に覚えはないのか?」


 違う。違うんだよ。

 ヤバい。頭が混乱する。

 現実世界の俺の姿が、ゲームのアバターになったんじゃない。

 その反対だ!

 ゲームのアバターの姿が、現実世界の俺になってる!


 これは……ゲームの中のキャラクターが、現実世界の俺を上書きしたってことか!?

 【リアル】の影響? 違う。クロイさんの話だと、ゲームの力を現実に持ち込んだのは俺が初だと言っていた。

 ということは、ノルンと一体化した影響か!


 けど、おかしいのはそれだけじゃない。

 なぜ明は、現実世界で俺の姿を見たとき疑問に思わなかったんだ?

 別人にしか見えないはずなのに。


 ノルン。アバターを変えたい! 今すぐにだ!!


『え、え、急にそんなこと言われても……。あっ、アバターセット買えば。いや、え、ダメなの? テンマ……その……【リアル】の場合、プレイヤー本人の体型や顔の作りは変えられないみたい。服や髪型なら変えられるんだけど』


 マジかよ。俺は元の自分の姿に戻れないってことか。


「ど、どうした? 兄貴、顔色悪いぞ。って、どうやったら顔色変えられるんだ?」


「い、いや、なんでもない。まだフルダイブ式VRに慣れてないだけだ」


「あっ、ミドリさんが来たみたいだ! こっちですよ!」


 手を振りながら、髪の色がミドリ色の女の子プレイヤーが近寄ってくる。

 そう言えば、髪の毛の色をミドリにするって言ってたな。

 間違いない、あれはミドリだ。


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