第29話

「私さ、さっきさ。モモちゃんと蕾の関係、良いと思うよって言ったじゃん?

「だけど本当はさ、良いって言っただけで、まだ認めてる訳じゃないんだよ

「知ってる?蕾はモモちゃんに暗示っていう信じられないものを使って、モモちゃんの心をゲットしたんだよ

「あぁ、その様子だともう知ってるんだね。それでも、蕾に会いたいんだ?騙されてたのに??

「ふふふ。もう分かってる。きっとモモちゃんは、蕾に暗示なんてかけられなくても、きっといつかは蕾のことを好きになってたよね

「それが少し路線から外れておかしな関係になってしまったから、私やあの人みたいな変な虫が寄ってきちゃっただけで

「ほんとに、もう分かってるんだよ。

「だから私はきっと、今ここでどんなにモモちゃんに『好き』を伝えたところで振り向いてもらえないって

「でも、それでも、さ。多分きっと今しか、この気持ちをモモちゃんに吐き出すことも出来ないから、さ

「少しだけ、聞いてもらえる?貴女の好きなところ、、、


まず、一目惚れだった。

見た目に関しては、まぁ申し分ないぐらい可愛いからね。


でもね、最初はその見た目に誘われて近づいたけど、今はむしろモモちゃんの内面に惹かれたんだよ?私。



見た目にそぐわず、内気なところ。


私が抱きつくと、照れながらも抱きしめ返してくれるところ。


強引な私に対して、迷惑がらずに全て受け止めてくれるところ。


はっきり物を言えないけど、それでも行動では誠実さが滲み出てるところ。


自分で筋の通ってない行動をした時、誰よりも自分を責めてしまうところ。


大切だと判断した人たちのことを、極力傷つけないように一番配慮してくれてるところ。


『ありがとう』をちゃんと言えるところ。


『ごめんなさい』とすぐに謝っちゃうところ。


『大丈夫?』と他人を心配できる心。



あと、、、




それが例え今は偽りでも、最後まで自分の『好き』を疑わない真っ直ぐなところ。




全部。その全部が。


――――大好きだよ。モモちゃん」



 …………

 ………………

 ……………………

 私は、何も言えなかった。


 どうすれば正解なのかが分からない。

 ただ、今、全てを私に明かしてくれた彼女は「ひっぐ、ひっぐ」と咽び泣いていた。

 本当に、いったい彼女は心のダムにどれほどのものを溜め込んでいたんだ。


 こんなにも私に対して想ってくれている子がいる。今はその事実に、私まで涙が出てきそうで。


 私はその涙を零すまいと、必死に堪えた。

 それでも感動と嬉しさと切なさでどうにかなってしまいそうな私は、ぎゅっ、と千草ちゃんを抱きしめる。


「っ!!―――ほら、そういう、ところ、だよ。あたたかいんだもん。モモちゃんは。だから、くっついていたくなる」

「ごめんなさい。ごめんなさい、千草ちゃん。貴女にこんなに辛い思いをさせてしまって、本当に、、、ごめん」

「ひっぐ、、ひっぐ、、、えへへ。謝って欲しい訳じゃ、ないよ?モモちゃん」


 背中をポンポンと優しく叩かれる。

 まるであやされる赤子のように。

 今は彼女の方が辛いはずなのに、私が気を遣われてどうするの。まったく。


 ………でも、やっと気づけた。


 私が前から抱いていた、千草ちゃんに対する、つぼみちゃんとは違った『特別な感情』。


「ねぇ、千草ちゃん」

「なーに?」

「私は、今からつぼみちゃんに会いに行くよ」

「ッ!!―――うん。いいよ。今度は堂々と言ってあげれるよ。

「……ありがとう。でもね、その前に千草ちゃんにお願いがあるの」

「お願い?」

「千草ちゃん、私の、『一番の友達』になってほしい」

「えっ。………それって、、」

「うん。『親友ベストフレンド』とも言う、かな」

「え、えへへ。えへへへへ。そっかぁ。じゃあ、これから私はモモちゃんの一番だ?友達として!」

「うん。これからも、よろしくお願いします」

「……うん!よろしく!大好きだよ!モモちゃん!!」


 そして、千草ちゃんは更にぎゅっと強く抱きついてくる。

 私もそれに、親友として強く抱きしめ返した。



 私が千草ちゃんに抱いていた特別な感情、それはきっと、友情を越えた気持ち。


―――『親愛』だったのだ。


 そのことに、手遅れになる前に気づけて良かった。



「行ってきます」



 そう言って、私は空き教室を出た。

 今度こそ向かう先は、つぼみちゃんのいる場所だ。



━━━━━━━━━━━━━━━

もっと私が上手く書けてれば、それだけ感動する話になってたかもしれないのに。

悔しいですね。


ですが、それでも、次が最終話です。


今夜18時に更新します。

見守ってくださると嬉しいです。

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