第27話
何かとスキンシップの激しい女の子。
つぼみちゃんとは別ベクトルの可愛さを持ってる天真爛漫な女の子。
それが、私から見た
そんな彼女が今、私にまたいつも通り笑顔で腕に抱きついてくる。
………どうしよう。今は一刻も早くつぼみちゃんに会いたい気分なのに。でも、何故だかやっぱり千草ちゃんに密着されると拒めない私もいる。
思えば、この子は知り合った当初からとても積極的に私に絡みに来てくれた。
常に笑顔で、私のつまらない話にも笑って反応してくれる。少しリアクションがオーバーで、嬉しくなるとすぐに抱きついてくるんだけど。
最初は戸惑ってたその行動も今じゃもう慣れてしまっている私がいる。
この子と一緒にいると、私は少しだけ自分が明るくなった錯覚に陥る。
根っからコミュ障の私は最近でこそつぼみちゃんのおかげで治ってきているけれど、それでも人見知りはなかなか。
だけど千草ちゃんとは、人見知りもしないままに仲良くなれてた。
ほら、今も。
腕に抱きついてくる千草ちゃんの、マシュマロみたいにフワフワな、やわらかさ。
こっちの頭までフワフワしてしまうような甘い香り。
そして極めつけの、この笑顔。
何度だって言う。
私はこの子に何かは分からないけど特別な感情を抱いている。
そんな千草ちゃんは私の耳元で、囁くように言ってくる。
「そんなに急いで、また蕾に会いにいくの?モモちゃん」
「ッ!―――う、うん」
甘い香りと甘い声に誘われてクラクラしながらも何とか頷く。
「やっぱり………そんなに蕾のことが好き?」
「そ、そりゃ、、大事なカノジョだし。当たり前だよ」
「…………それが、例えば偽りの関係だとしても、同じことが言えるの?」
「ッ!!」
また、だ。
これで疑いはとうとう確信に変わってしまう。
やっぱり、つぼみちゃんは何時からかは分からないけど私に暗示をかけて、この関係は偽物だったんだ。
でも、もう関係ない。
それに対しての新しい答えも、つい先程見つけてきたばかりだから。
………でも、どうして千草ちゃんも知ってるの?
「例えつぼみちゃんとの今の関係が偽物だとしても、私はやっぱりつぼみちゃんのことが好きなんだと思う」
「っ、、ほんとに?」
「うん」
「………そっか」
???
今日の千草ちゃんは何だかおかしい。
今までの彼女は常に笑顔で、こんなに曇った表情は見たことが無い。
でも、それも一瞬のことで。
すぐに千草ちゃんは、またいつも通りの笑顔に戻った。
「ふふっ。なーんてね!ごめんね?ちょっとからかって見ただけ!偽りの関係とか、そんな酷いこと思ってないからね?私は良いと思うよ!!」
たははー!と彼女は笑っている。
いつも通りに。
「………ありが、とう」
だけど、どこか今の彼女の笑顔には影が差しているように見えた。
本当は、今すぐにでもつぼみちゃんに会いたかったけれど。そんな思いも、やっぱり千草ちゃんが私の中で特別だからか、もう少しだけ、この子と一緒にいようと思えてしまった。
「ほらほら!ほんっとごめんね?引き止めちゃって!もう私のことはいいから、早くつぼみちゃんに会ってきなー!!」
元気よくそう言って私の背中を押す彼女が、やっぱり今はどうしても空元気にしか思えない。
「ねぇ、千草ちゃん。ちょっと二人で話さない?」
だから私はそう提案した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます