第13話
「―――染谷ちゃん、染谷ちゃん起きて」
「んぅ〜〜」
「起きないと、ちゅーするよ?いいの?」
「むぅ〜、ゃーだぁ」
「嫌じゃないでしょ?ほんとは先生にちゅーして欲しいんだよね♪」
「せんせぇ?………じゃあ、いっかぁ」
ふふふ、と大人びた艶のある女の人の笑い声が耳元をくすぐる。
眠たい。
あれ?さっきまで何の夢を見てたんだっけ?
思い出せない。思い出せないけど、最後の方とか、結構心地良かった記憶が無くもない。
もう一眠りすれば、また同じ夢って見られるのかな?
ハァハァと荒い吐息が、頬を撫でて、くすぐったい。
むぅ。これじゃ眠れない。
あぁ、段々と意識が覚醒していってる。
まだ、もうちょっとだけ、眠っていたい。
頭はまだ働いてはくれないようだし。
「染谷ちゃん、もう一度おさらいね?染谷ちゃんは、
「………わたしはぁ、せんせぇのー、しょゆー?ぶつ」
「ふふふ♪そうよ。よく言えました、えらいえらい♡――染谷ちゃんは、私のことが大好き」
「………わたしはぁ、せんせぇーがぁ、だいすきぃ」
自分が何を言ってるのかも分からない。
それくらい、寝起きの頭は働いてくれてない。
あ、なんだか先生の声を聞いてたら、また眠たくなってきた。
寝れるかも。
「すぅー、すぅー」
私にとって二度寝なんてものは難しいことじゃなかったみたい。
◇ ◇ ◇
「染谷ちゃん、起きて。お友達が来てくれたわよ」
「んっ」
肩を揺すられて、私は今度こそ目を覚ました。
知らない天井、、、なんて感想を抱くわけもなく、見慣れた保健室の天井だ。
そうだった。
私はどうしようもなく眠たくなって、保健室で寝てしまったのだ。
恥ずかしい。
保健室のお姉さんに寝顔見られちゃった。
ん?いや、午前中も見られたし、別に恥ずかしくないのでは??でもなんでだろ、今はとっても恥ずかしい。
それより、たしか今さっき保健室のお姉さんは、お友達が来てくれたって言ったっけ?
誰だろう、私がお友達と呼べる人なんて………あ、
私のベッド脇に座ってたのは、心配そうに私の様子を観察する
どうしよう、なんて声をかければいいのかな。
「か、笠井さん………」
きっと勘違いしてるよね。
保健室なんかで寝てたら、体調が悪いから、って勘違いされて余計に笠井さんに心配をかけてそう。
誤解なのに。でも言えない。
いつもは教室で寝てるのに、なんで今日は保健室なの?って聞かれたとき、上手く誤魔化せる自信が無い。
………???
あれ?なんで私、今、保健室でただ先生のお手伝いをしてただけなのに、誤魔化そうとしてたんだろ?
「
「う、うん」
有無をも言わせぬ圧を感じた。
こんなに切羽詰まった表情をしている笠井さんは初めて見たかもしれない。
私は頷いて、保健室から出ていく笠井さんの後ろを着いていく。
保健室のお姉さんに最後にベッドを使わせてもらったことへのお礼をと思って振り返ると、保健室のお姉さんは妖艶な笑みを私に浮かべて、手を振ってくれた。
かぁーー/////
と顔が一気に熱くなり、私はニヘラとだらしない笑みを浮かべて手を振り返した。
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