第12話
………暗い。
何も見えない。
私は今、そんな場所にポツンと立っていた。
ここはどこだろう。
私はなんで、こんなところにいるの?
誰かいないの?
数々の疑問が湧き上がっては霧散していく。
右も左も分からない。
そんな状態ではあるけれど、何かしなければ、もしかしたらずっとこの暗闇の中に閉じ込められたままかもしれない。
そう思ったら、急に動かなきゃ!と思った。
私は手を前に突き出して。
何かを探すように、何も見えない暗闇を歩く。
―――
……なんだろう。なんだか急に寒気が。
―――染谷ちゃんは急に怖くなる
……こ、こわい。もうお化けなんて信じてないのに、今は何故だか無性に怖い。
―――染谷ちゃんは段々と恐怖が増していって、誰かに助けを求めたくなる
……だ、誰か、助けて。怖い。暗いのが怖い。何も分からないのが怖い。こわい、こわいよ。誰か助けてよ。
―――でも誰も助けてくれない。だって染谷ちゃんは一人ぼっちだから
……私は、、一人ぼっち。誰も、助けてくれない。嫌だよ、そんなの。悲しいよ。寂しいよ。誰でもいい、助けて。助けて、助けてよ、かさいさ
―――染谷ちゃんを助けてくれる人が、一人だけいたみたい。良かったわね。染谷ちゃんは一人じゃなかった
頭の中に無機質な声が響いていて、それも怖い。そしてそれをなんの抵抗もなく受け入れてしまっている自分に驚く。
でも今は、そんなものはどうでもいいの。
暗闇の中に、一筋の光が射し込んだ。
「か、笠井さ―――」
なんでこんなところに笠井さんがいるなんて、私は思ったのだろう?
どうして笠井さん?
でも一番最初に助けてほしいと願った相手は笠井さんだった。
この光の向こうに、笠井さんがきっといる。
笠井さんが私を助けてくれる人なんだ。
そう思いながら光に向かって、ただひたすらに私は走った。
そして見えてくる人影。
私はそれに手を伸ばして、、、
むにゅ
私の手が、何かやわらかいものを掴んだ。
もみもみと、手を動かす。
ふわっふわで、とっても触り心地が良いものだった。
なんだろう。
そう思うのも一瞬のことで、私は手を引っ張られて、そのやわらかいものに顔をダイブさせた。
いや、させられた。
あったかい。
あぁ、この人が私を助けてくれる。
唯一の味方なんだ。
私のことを一番に理解して、私の心を満たしてくれる人。
もう既に私の頭の中には笠井さんでシルエットが構成されている。
私はやわらかいものから顔を上げた。
と同時に、また無機質な声が頭に響いた。
―――染谷ちゃんを助けてくれる、たった一人の染谷ちゃんの依存先は、
―――笹浦 詩子は、染谷ちゃんを唯一大事に想ってくれる人
―――染谷ちゃんは、笹浦 詩子のことしか考えられなくなる
あぁ、やっぱり。
やっぱり私の想像通りの人物がそこにいた。
この人だけが、私の唯一の味方なんだ。
だって、怖い時に真っ先に頭に浮かんだのは、この人だもん。
私が顔を上げると、そこには保健室の先生が優しい笑みを私に向けていた。
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