side 笠井 蕾

 私は学校に、大好きな女の子がいる。

 同性。女の子同士。

 それは友愛?んーん。違う。

 女の子同士、だけど、もちろん恋愛的な。


 その女の子と付き合いたい。

 友達同士じゃ出来ないことを、いっぱいしたい。


 手を繋ぐことも。

 ハグすることも。

 キスすることも。

 その先のえっちだって。


 私はその女の子に本気で恋をしているの。

 同じクラスになってから一目惚れ。


 でも、私は他よりも少し見た目が良いらしく、他のクラスメイトの子たちや他学年他クラスの子たちまで、私の周りに集まっては、その女の子と話す機会が全く得られなかった。


 私は考えた。

 このままじゃダメ。

 みんなが私のことを嫌ってくれれば。


 その時に浮かんだアイデアが、『眠り姫』だった。

 いつも眠たげで、話しかけられる前に眠る。

 そーやって近寄ってくるなオーラを出し続ければ、いずれみんな諦めるでしょ?


 効果は覿面だった。

 今ではみんな挨拶だけで留まってくれる。


 よし、これで好きな子と話す機会を得た。


 そう思ってたら、あることに気づいてしまった。

 その子は、外見はいかにも陽キャラ美少女って見た目なのに。コミュ障だった。

 仲良くなりたくても、言葉のキャッチボールすら上手くできない。


 でも、やっぱり諦めきれない。


 私は夜な夜な、インターネットで必死に『好きな子に振り向いて貰える方法』『好きな子が私に依存する方法』を調べまくった。


 そうして見つけたものが、



―――暗示・洗脳



 だった。

 もう言い逃れはしません。

 はい。自首する。私は、寄りにもよって最悪で幼稚で、嘘みたいな方法に縋った。


 幸いにも、私の好きな子は放課後になると誰も居なくなった教室で完全下校時刻まで眠る。


 私は洗脳を始めた。



 初日


桃花ももかちゃんは、え、えっと、私、じゃなくって、、、ん?あ、最初の暗示は名前も言わないとダメか。えっと、桃花ちゃんは、わた、私のことが好きになるー」


「……………(スヤスヤ)」


 虚しくなって、馬鹿らしくなって帰った。



 一週間


 初日はアホらしくなって諦めかけたけど、インターネットには継続が大事って書いてあったから、あれから毎日試してる。


 大分暗示のセリフも慣れてきた。


「桃花ちゃんは私のことを愛してる。桃花ちゃんは私のことを愛してる!」


「んっ。か、かさ、い、、、、しゃん」


「!???」


 き、効いてる、かも!??

 多分この時から、私は本気で暗示・洗脳にのめり込んでいった。



 二ヶ月後


「あなたは私のことが大好き♡あなたは私のことが大好き♡あなたは私のことが大好き♡あなたは私のことが大好き♡あなたは私のことが大好き♡あなたは私のことが大好き♡あなたは私のことが大好き♡――――桃花ちゃんは、笠井 蕾のことが大好きで堪らなくなる♡♡」


 暗示は着実に桃花ちゃんに効き始めてる。

「笠井さん」と呼んでもらえるようにもなった。

 挨拶だって、吃りながらも返してもらえるようになった。

 目を見てもらえるようになった。

 目が合う頻度が増えた。

 笑いかけてくれた。

 私に笑顔を見せる回数が増えた。


 きっとそのどれもが、この暗示のおかげだ。


 、少し弱気になってらしくも無くみたいなことを言っちゃったけど。


 今日は凄い。

 先生に呼ばれていつもより30分くらい遅れて教室に行ったら、桃花ちゃんは眠っていた。

 それもかなり眠りが深かった。

 ??


 とりあえず、また私はいつもみたいに暗示のセリフを桃花ちゃんの耳元で囁き続けた。


 すると――――


「んっ、、、あぅ、、んぁ」


 桃花ちゃんが、眠りながらそんな反応をしだした。

 私は何故だか分からないけど、今がチャンスだと思った。


 私は、自分の欲求たっぷりの暗示をツラツラと並べてビクビクと反応する桃花ちゃんに囁いた。


「―――桃花ちゃんは私のことが可愛く見えて仕方なくなる。

 ―――桃花ちゃんはつぼみのことが大好き♡

 ―――桃花ちゃんは、私のことが好きで好きで堪らなくって、独占欲が強い♡♡♡

 ―――桃花ちゃんは、私のことが可愛く見えてどうにかなっちゃいそう♪♪」



 この時の私の判断と、欲望のままに従った本能を、私は褒めてあげたい。


 だって、きっと、たぶん。

 この暗示のおかげで、今私の隣をニマニマと笑いながら手を繋いでニギニギして歩く、そんな可愛すぎる桃花ちゃんと一緒に帰ることが出来てるんだから。


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『こちらJK、そろそろ好きな子を百合堕ちさせます。どうぞ』

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