第7話

 ピピッ、ピピッ、ピピピピピピ!


 目覚まし時計に起こされて、私は伸びをしてベッドから出る。

 二階にある自室から階段で一階のリビングに向かう。


 朝ごはんを作ってくれてるお母さんに「おはよ」と挨拶をして、洗面台で顔を洗った。

 鏡に映る自分をボーッと、まだ寝起きで頭が働かない状態で眺める。


「ん?」


 ふと、首筋に赤い腫れ物を見つけた。

 なんだろ、これ。

 触ってみても、特に痛みを感じない。

 けれど、なんだか、痣みたいな。内出血かな?これ。

 よく分からないけど、その腫れ物は首筋の一箇所だけだったから放置することにした。


 虫刺されの可能性だって、あるし。

 昨日どこかで刺されたのかな?と昨日学校から帰ってきてからのことを思い出してみる。

 あ、あれ?

 そういえば私、詳しくは思い出せないけど、に色々と迷惑かけちゃったかな?


 余計なことまで思い出して、一人洗面所で顔を赤くする私。


 烏滸がましくも手なんか繋いでしまって、ニギニギまでしちゃった記憶が蘇る。

 はわわわわ。私、学校一の美少女になんてことを。


 今日も学校に行かなければならない。


 付き合ってもないのに。

 女の子同士なのに。

 昨日の私は何をやってるんだ。

 手を繋ぐことなんて、全然当たり前じゃないよぉ!!!


 というか、あの後、つぼみちゃんと一緒に下校してる途中からの記憶がまったく無い。

 私、いつの間に眠ったの?

 ど、どうして思い出せないんだろ?


 ま、まぁでも?

 思い出せない記憶って、そんなに印象に残らないものだと思うから、何かやらかしたりはしてないはず。


 私はそれから諸々の準備を済ませて、学校に向かった。

 この時の私にはすっかり首筋の内出血は頭に無かった。



 ◇ ◇ ◇


 教室の前で一度、大きく深呼吸をして私は扉に手を掛け―――


「桃花ちゃん、おはよ」

「わぁ!??」


 ――ようとして、不意に後ろから肩を叩かれた。

 後ろを慌てて振り返れば、つぼみちゃんがニコニコといた。


 びっくりした。

 びっくりしたんだけど、あれ?おかしいな。

 なんだか、つぼみちゃんを見てると多幸感に包まれる。


「どうしたの?桃花ちゃん?(ニヤニヤ)」

「え、あ、あぅ、、お、おはよー」

「うん!おはよう桃花ちゃん。昨日は楽しかったね?」

「えっ?」


 昨日、、楽しかった??

 私たち、あの後なにかしたっけ?

 どうしよ。思い出せないのに。

 正直に忘れたって言った方がいいかな??


 で、でも、もしもつぼみちゃんに嫌われたらどうしよう。

 


「もしかして………覚えてないの?」


 つぼみちゃんは私の首筋をじーっと見つめながらそう言ってきた。


「あ、ああ、ご、ごめっ、、、なさっ!ほ、ほんとに、、お、おも、思い出せ、なくて!」


 ポロポロと、つぼみちゃんから嫌われてしまうかもしれないと想像したら、涙が止めどなく溢れてきた。

 ヒックヒックと肩を揺らす。


 どうしよう。涙を止めないと。

 つぼみちゃんに迷惑かけちゃう。

 そしたら、嫌われちゃう。

 つぼみちゃんに!!









 ???










 愛して、、もらえない???











 何を言っての?私。

 いつ私は、に愛してもらったの?

 あ、あれ?

 な、なんだか、色々とおかしくない?

 私も、笠井さんも。


 なんだろう、気持ち悪い。

 頭が、気持ちが、ごちゃごちゃする。


 それでも、おかしいって分かってるのに。

 本能がもう、笠井さんに嫌われたらおしまいだ、と言っていて、涙を止めることが出来ない。


 おかしい。

 おかしいって笠井さんに言わないと。


「あーあー、泣いちゃった。桃花ちゃん。可愛いね。――――桃花ちゃんの泣き顔、誰にも見られたくないなぁ。独り占めしたい」

「ヒック、、ヒック、、、ぇ?」


 何かボソボソと笠井さんが言ってる。

 独り占め?何のこと?


 私が混乱している内に、事はどんどんと進んでいった。


「ねぇ、ちょっとそこの」

「えっ?私ですか!??きゃーー♡笠井さんに話しかけられ――――」

「うるさい。ちょっと私保健室に行くから、先生に言っといて」

「え、あ、うん!分かりました!!!」


 笠井さんは廊下を歩くクラスメイトにそう言って、涙を止めるので精一杯な私の肩を抱いて歩き出した。


 クラスメイトが、一瞬私を見て「は?なんでコイツが笠井さんと??」みたいな顔をしてた。


 私も分からない。分からないのに。

 笠井さんと一緒にいると、私もよく分からないままにおかしくなっちゃう。


 今は笠井さんから、離れないと、いけないのに。



「忘れちゃったなら、すぐに思いだそーね♡」

「………………ぅん」


 至近距離で笠井さんに見つめられて、なんだか無性にドキドキしてしまって、おかしいと分かってるのに私は、頷いてしまった。



━━━━━━━━━━━━━━━


昨日投稿した新作も伸びてて嬉しい。

今日は公式自主企画''百合小説''に参加する作品を投稿するので、そっちも読んで応援してくれると嬉しいです!!


あ、もちろんこの後、昨日あげた新作も更新します!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る