第6話

 私と笠井かさい つぼみさんは手を繋いで下駄箱に向かった。

 恥ずかしい?

 そんな気持ちはないよ。だって、笠井さんと手を繋ぐことはのことなんだから。


 下駄箱に到着して、お互い靴を履き替えるために繋いでいた手を離した。

 私はなんだか名残惜しくて、ついつい悲しそうな顔をしてしまっていたみたい。

 笠井さんに、


「可愛いすぎるよ桃花ちゃん」


 って言われた。

 か、可愛いとか、簡単に言わないでほしい。

 か、笠井さんの方が可愛いよ!!

 って、いつか私も言えるのかな??


 私が上履きからローファーに履き替えていると、細身のスラッとした、私よりも体型が断然良くて、高身長でモデルみたいな女の子が笠井さんに話しかけに来た。


「あっ!笠井さん!!今から帰るの!??えっ、私も今さっきバレー部の自主練終わってさ、帰るところなんだよね!!一緒に帰ろ!!」


 つい昨日までだったら、きっとこんな場面を目撃しても別に何とも思うことも無くて、普通にスルーしてたし。

 胸の中も、こうやってグチャグチャに荒れ狂うことも無かったのに。


 ほんとに、どうしちゃったんだろう、私。

 頭の中にどんどん靄がかかっていく。


『―――桃花ちゃんは、私のことが好きで好きで堪らなくって、独占欲が強い♡♡♡』


 どこかで聞いたような聞いてないような、そんな『声』で、『言葉』で、私の頭の中が埋め尽くされる。


 今、私の目の前では、バレー部の高身長女子が笠井さんを

 笠井さんは私をチラチラと気にしては、困惑してる様子。


 きっと、笠井さんは優しいから。

 断ろうにも、断りきれないんだ。

 そんな人の優しさに、ズケズケと踏み入れるなんて、あのバレー部の人、許せない。



―――桃花ちゃんは、私のことが好きで好きで堪らなくって、独占欲が強い♡♡♡


 なんだか、笠井さんのことが堪らなく愛おしい。


―――桃花ちゃんは、私のことが好きで好きで堪らなくって、独占欲が強い♡♡♡


 笠井さんの全てが、好きになっていく。


―――桃花ちゃんは、私のことが好きで好きで堪らなくって、独占欲が強い♡♡♡


 笠井さんは、

 笠井さんは、私もの。

 笠井さんを、他の女に盗られたら、私はおしまいだ。



「ねーねー!笠井さん、お願いだから!私と一緒に帰ろ!ね?今だって、どうせ帰るところだったんでしょ??だったら良いじゃん。私も一人なんだし、帰ろーよー」


 バレー部の女の子は、私のことなんて眼中に無いみたい。

 そのことも腹立つのに。

 私の笠井さんに、あんなにベタベタと………


 私はズケズケと歩いていって、


「だーめ!」


 彼女たちの間に強引に入り込んだ。


「は?誰おまえ」

「も、桃花ちゃん!?」


 二人とも私の行動にびっくりしてる。

 そりゃそうだよね。

 私っていつも地味ーな女で、こうやって衝動的に動いたことないし。


 でも、今はやだ。

 笠井さんが、私の笠井さんが、このままじゃこの名前も知らない女に盗られそうで怖い。


「笠井さん、この子だれ?」

「笠井さんの知り合い?」

「笠井さんのストーカーとか?なんか地味っぽいし」

「笠井さんとは釣り合わないよね」


 バレー部の女は、なおも笠井さんに話しかける。

 笠井さん笠井さん笠井さん笠井さん笠井さん笠井さん笠井さんって!!!

 何度も何度も、私のものを自分のものみたいに言って。


 笠井さんは私の笠井さんなんだから!!

 何か、私と笠井さんだけの、何か特別が欲しい。

 何か。何か。何か………


 あ、そうだ。



「笠井さん、こんな外面だけ良い内面地味女なんて放っておいて、一緒に帰ろ?」

「だーめ♡」

「え?」


 バレー部の女が強引に笠井さんの手を取ろうとしたから、今度は勝ち誇った声でもう一回言ってあげた。


 私は笑う。

 アピールするように。


は、私と帰るんだから♡♡」


 そう言い残して、私は今度こその手を取って学校を出るのだった。



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女の子が堕ちていくのも。

女の子の愛が重たくなっていく過程も。


みさきさんにとってはたまらんですたい。


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百合要素を含む異世界ファンタジーです!

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