第51話 新アイテム使用チャンス!

 ドロップアイテムを回収し、再びボス部屋目指して移動を再開した。


 だが、思うように進めたとしても、ボス部屋にはなかなかたどり着けない。


 ダンジョンは、下の層へと行けば行くほど、広さを増していく。


 上層ほど狭く、中層、下層と降りるほどに広くなるため、深層ともなれば、ボス部屋まで移動するだけで一苦労だ。


「にしても、深層だけで闘技場みたいな場所が複数あるなんてね」


「え? しょうちゃんのその言い方だと、この二つ目で終わりじゃないの?」


「俺が見えてる限りだと、まだいくつかあるみたいだよ? もちろん、全部が全部、今まで戦ってきたみたいな、中ボスとセットの場所かどうかまではわからないけどね」


「談笑しているところ悪いが、ここはその、中ボスがいる部屋みたいだが?」


「そうだね。気を引き締めていこう!」


 部屋に入るなり、前回の闘技場に入った時と同じような炎の演出が巻き起こる。


 だが、動き出した大型のモンスターは、前回とは違い、ウシではなかった。


 さながら、トリ戦士とでも言ったところか。ウシと同じような金ピカの鎧を身にまとった、大型のモンスター。


 中層のボスとして出てきたという話は聞いていない。別に、ボスモンスターと関連するモンスターがいる、というわけではないみたいだ。


:他の場所でも鳥みたいなボスっていたっけ?

:ヤッベェ。初見じゃね?

:深層は、これまでのの亜種だと思ってた!


 コメント欄の様子からしても、どうやら、このトリ戦士と同類のボスの情報はないらしい。


 つまり、ヒントも何もない中での戦闘となる。


「さて、どう出てくるかな? うっ!」


 またしても突風。


 しかし、今回は、オノによるものではなく、翼によって起こされた強風。


 だが、風が吹いてきた瞬間こそ、体がふわりと浮く感覚があったが、オノで起こされた風ほど強くない。踏ん張らなくとも立っていられる。


「全然問題ない感じ?」


「確かにそうかも。耐性かな?」


「風に耐性もないと思うが」


「となると、この装備じゃない?」


 新しく拾ったアイテム類の効果か。


 元々の装備でも、丈夫さなら劣らないだろうが、確かに、こういう状況への対処となると、特殊な効果がものをいいそうな気がする。


:マジックアイテムパネー!

:風無効って、トリさん涙目?

:もっと風がんばれよ!


 なんか変なコメントも見えた気がしたが、今は無視だ。


「このまま一気に接近しよう! 『ウィンド』!」


 便利な初級魔法で、全員をトリ戦士へ向けて射出!


 必死に吹き飛ばそうと羽ばたいていたからか、トリ戦士も疲れてきていたらしく、動きがどんどん鈍くなっている。


 それもあって、風圧なんて関係なく、俺たちの体はスイスイと前進していく。


「今の剣なら、いける!」


 すれ違いざまに一撃。


「クワア!」


 鎧ごと切り裂いた。これはいける。


「わたしも、こんなグローブを拾ったんだから!」


「ここで魔法を放つ。いいじゃないか!」


「しょうちゃんの剣が効くなら、あたしのヤリだって!」


 上級者たちの三連撃が見事に決まり、トリ戦士は簡単にチリと化した。


「やったねしょうちゃん! いえーい!」


「いえい!」


「ずいぶんと余裕だったな」


「油断は禁物だけどね」


「はい。でも、新しい装備が使えることが確認できたのは、とてもよかったです」


「そうだね。わたしもこれがあった方がいいかな」


 またしても、猫のモンスターでもいたのか、えりちゃんのグローブは猫の手の形をしていた。


:学習していくスタイル!

:さすがすぎて、もう他の言葉が見つからない!

:なんか、どんどん人間辞めてない?


「人間は人間だと思いますよ?」


:今なら壁を壊して進めるのでは?


「確かに! しょうちゃんちょっとやってみてよ」


「みんなにできなくて俺にできるかな?」


 まあ、ものは試しだ。


 やるだけならタダ。それに、拾ったアイテムは一つだけじゃない。ここで壊れても取り返しがつく。


「せーのお! うぅ、うあっ!」


 思い切り溜めて切りつけてみたが、まるでそういう加工でもされてるように跳ね返された。


「しょうちゃんでも跳ね返されちゃうんだ……」


「ショートカットは無理なようだね」


「切り替えていきましょ。確実に近づいていることは確かなんだから」


「そうですね。あと少しです。行きましょう」






 そこからの道中は、特に苦戦することなく進めた。


 新しい装備を使うことにも慣れてきて、深層のモンスターでも対処できるようになっていた。


 そして、しばらく歩いていると、とうとう、装飾の施された壁が見えてきた。ボス部屋までの通路だ。


 自ら発光しているようなかがやきは、思わず心奪われる美しさを秘めている。


「帰るには、この先のボスを倒さないといけない」


「そうだね。でも、今のわたしたちならできるよ」


「やるまではわからないがな」


「ゆいちゃん! 縁起でもないこと言わないでよ!」


「やるまではわからないんだ。いや、ワタシたちに他の選択肢はない。やらないと帰れないんだからな」


「そうね。関さんの言うとおりだわ。あたしたちはそうやって、窮地を抜けてきたんだもの」


 そう思うと、俺は他のみんなよりも戦歴が短い。


 その分だけ、今回の戦いへの覚悟は弱いかもしれない。


 でも、決して足手まといにはならない。


「しっかり準備して……。あれ、何か音しませんか?」


「音?」


 俺たちの来た方向から、何かが砕けるような音が、連続して響いてくる気がするのだが……?


 耳に手を当ててよーく聞いてみると……。


 うん。聞き間違いじゃなさそうだ。確実に何かが迫ってきている。


「あれは、つらら!? だけじゃない。暴風とか、斬撃まで飛んできてる? は、早く行こう!」

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