第4話:抗い続ける勇者達は傭兵団に立ち向かう。
「敵よ!
私が矢を射掛けるから、強硬突破して」
「任せなさい!」
前衛を務めてくれているシキルナとスリアンナが、自分達の乗る馬車を急がしています。
私の乗る中央の馬車が安全なように、距離を離してバリケードを突破するのです。
これで三度目の襲撃ですから、彼女達の戦法も多少理解しましたが、修道女とは思えない荒々しい戦い方です。
流石に王命と聖獣強化多数派を無視した硬骨漢。
いえ、妙齢の女性に漢の表現は失礼ですね。
ですが彼女達の戦いぶりは、遊撃に徹しているサリバンから聞く限り、コスタラン伯爵家に仕える騎士達にも引けを取りません。
ろくに整備されていない街道を高速で走る馬車は、上下左右に激しく揺れます。
そんな馬車から矢を射掛けても、普通は全く当たりません。
それが的確に敵を射抜くというのです。
その若さからは信じられない、名人達人級の弓術です。
コン、コン、コン
独特の間合いで三度馬車のドアが叩かれました。
側面に敵が現れたのでしょう。
馬車の横を騎馬で護ってくれていたサリバンが、側を離れて遊撃に向かってくれるようです。
敵の襲撃が徐々に執拗になっています。
最初の襲撃は、街道に待ち伏せして一斉に襲い掛かって来るだけでした。
修道女達のあまりに正確な弓術に恐れをなしたのでしょうか、矢を射掛けながら強硬突破するだけで、蜘蛛の子を散らすように逃げ出したそうです。
二度目は、街道にバリケードを築いて襲ってきました。
ですがそのバリケードを、教会の輓馬は蹴破ってくれました。
普通の輓馬には不可能な事です。
いえ、鍛え抜かれた軍馬でも不可能な事です。
そんな事ができるのは、コスタラン伯爵家の秘蔵馬だけだったはずなのですが……
三度目の襲撃は、街道のバリケードに加えて、騎馬隊を用意していました。
騎馬隊を用意したのは、バリケードの前で側面攻撃をして、バリケードを突破する突進力を削ぐためだと、後でサリバンが教えてくれました。
ですが五騎の騎馬隊は、サリバンがいとも簡単に討取ってくれましたので、何の問題もなく突破出来ました。
サリバンは私の護衛騎士です。
貧しいコスタラン伯爵家では、王太子殿下の婚約者に相応しい数の護衛騎士や侍女を王都に送れませんでした。
ですから、少数精鋭です。
護衛騎士はサリバン一騎。
侍女は私の乳姉妹でもあるウルスラただ一人です。
ヒィィィィィン
コスタラン伯爵家秘蔵の馬が暴れてくれています。
父上が私のために付けてくれた馬達。
最悪の場合でも、私が領地に逃げ帰れるように、コスタラン伯爵家最高の馬を五頭も王都に送ってくれました。
私の馬車を牽く四頭とサリバンが騎乗する一頭。
これ以上は物価の高い王都で餌代を遣り繰りできませんでした。
四度目の襲撃で、馬達に活躍してもらわないといけない所まで、私達は追い込まれたのですね。
私達は四度目の襲撃で、馬達に活躍してもらわないといけない所まで、追い込まれました。
しかし、敵の執拗な追跡はまだ終わっていませんでした。
道路の向こう側が、異様な静寂に包まれているのです。
その静寂を破るように、数多くの足音と銃器の装填音が聞こえてきました。
五度目の襲撃にして、敵は歴戦の傭兵団を動員してきたのです。
傭兵たちは冷酷な眼差しで私たちに近づきます。
手にした様々な武器の扱いがこれまでの敵とは段違いです。
彼らは戦闘経験豊富な本物傭兵でした。
シキルナとスリアンナは、馬車を囲むように立ち、傭兵団と対峙します。
彼女たちは剣や盾を携え、私たちの身を守るために決死の覚悟で立ち向かいます。
他の三人は弓を手に取り、矢を次々と放ちます。
しかし傭兵たちは盾と鋭敏な動きで矢を回避していきます。
傭兵団は巧妙な戦術で私たちを翻弄しようとします。
彼らは包囲網を張り、私たちを窮地に追い込もうとするのです。
私たちは絶体絶命の危機に立たされながらも、諦めることはありません。
シキルナとスリアンナは剣の腕を振るい、傭兵たちとの激しい肉弾戦を展開してくれています。
他の修道女三人が再び弓を引き、傭兵たちの隙を突いて矢を放ちます。
戦いは熾烈を極め、傭兵団の数も減っていきます。
しかし、彼らは執拗に私たちを追い詰めようとするのです。
私たちは息つく暇もないまま、傭兵たちとの攻防を繰り広げます。
その中で私は一瞬、傭兵団の指揮官を見つけました。
彼こそがこの襲撃の首謀者であり、最大の脅威です。
「サリバン、あれが団長に違いありません」
私の言葉を聞いたサリバンが狙いを定め、矢を放ちます。
矢は空中を舞い、傭兵団長の胸に突き刺さりました。
彼は血を吐きながら倒れ、傭兵団の士気は一瞬にして低下します。
シキルナとスリアンナの勇敢な戦いに加え、サリバンの的確な射撃が功を奏し、傭兵団は撤退を始めました。
私たちは一息つきながら、次の襲撃に備える準備を始めました。
戦いはまだ終わっていません。
私たちは生き抜くために戦い続けなければいけません。
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