五日目
息子の破れ目を縫い合わせるのに、一晩かかった。
もう、くたくた。
睡眠不足で頭が痛くなってきたので、とりあえず寝ることにした。
夢の中に息子が出てきた。生きている状態で。
なんかテーマパークだと思ったら温泉だったりとか、お土産がなぜか自転車だったりと、内容は支離滅裂。
最後は、息子がタップダンスを披露してくれている途中で目が覚めた。
なぜ、タップダンス?
生前、息子はタップダンスになど縁はなかったのだが…。
とりあえず、目を覚ましたときには夕日が窓から差し込んでいた。
慌てて夕食の支度に取りかかる。
息子は死体だから、一緒にいられる時間はもう限られている。
昨日破れてしまったように、確実に腐敗は進んでいるのだ。
ご飯を食べさせなきゃ。
今日、こしらえた晩ごはんは、魚の照り焼きと茄子の煮浸し、そして野菜たっぷりの豚汁。
いままで通り、息子の口をこじ開けて食べさせる。
咀嚼させるたび、カクンカクンと音がする。
最後の一口を食べさせたときだった。
パキャッ
と音がして、息子の顎がはずれてしまった。
…また息子を壊してしまった!!
昨日と同じく、裁縫箱を持ってきて縫い合わせる。が、この前の腹と違って、顎は骨の占める割合が大きいから、上手く縫合できない。なんとか皮膚を寄せて引っ張って、無理矢理縫い付けた。
駄目だ、歪んでる。息子はこんな顔じゃない。
力ずくで調整しようとして、ずれた顎を正しい位置に寄せると。
ボロッ、ボトボトッ
息子の顎を覆っていた皮膚が、縫い目から避けて崩れ落ちた。
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