二日目

今日の晩ごはんは鶏肉の煮物とサラダ、そして厚揚げ。

鶏肉はしっかり味付けしたし、厚揚げも味を染み込ませてある。

でもやっぱり息子は喜んでくれない。というより、反応がない。


息子は死んでるんだから、当然だけど。


昨日の晩に比べると死後硬直は少し緩んでいて、若干ではあるけど口の開け閉めがしやすくなっている。でも咀嚼させると一回ごとにカクンカクン音が鳴る。顎がはずれて直らなくなってしまわないか心配だ。顎関節症の患者は病院で診てもらえるけど、死体を運んでいってもそうはいかない。



ごはんのあとはお風呂。

昨日と同じように、服を脱がせて体を洗ってあげる。やっぱり気まずい…。

洗い終わって、湯船に入れる。昨日は頭をぶつけてしまったから、今日は気をつけて足のほうからそっと。そしたら今度は

ボンッ

足をぶつけてしまった。

まあ、死体なんだからぶつけたって痛くはないだろうけど。



体を拭き、パジャマを着せて髪を乾かす。

そして寝室へ引きずっていき、ベッドに寝かせる。

そしてやっと、私がお風呂に入る番。



体を洗ってから、湯船に浸かって目を閉じる。今日一日を振り返る。


息子が死んだのは昨日。だから、丸一日死体と過ごしたのは今日がはじめて。朝はスクランブルエッグとパン、昼は冷やしうどんを食べた。もちろん、息子にも食べさせた。



死体はいずれ、腐って原型をとどめなくなる。


息子は、いつまで一緒にいてくれるかしら。


せめて一週間は、目の前にいてほしい。

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