息子の死体
岩山角三
一日目
今日の晩ごはんはカレーライスとサラダ、そしてポトフ。カレーにはいつもと違って、目玉焼きを乗せてみた。
おいしくできたけど、息子は喜んでくれない。というより、喜べない。
だって、息子は死んでるんだもの。
全身は固く冷たくて、皮膚はブヨブヨしていて、顔色は真っ青。目と口は半開き。
死後硬直してるから、ごはんを食べさせるのにも一苦労。
こぼれるたびに、拭ってあげないといけない。
もう、赤ちゃんのときみたいに手間がかかるんだから…。
晩ごはんのあとはお風呂。
やっぱり手間がかかる。だって勝手に入ってはくれないもの。
服を脱がせて裸にしてから浴室に運んで、洗ってあげなきゃいけない。息子とはいえ成人男性だから、なんだか恥ずかしいというか気まずいというか…。
湯船に入れてあげるとき
ドンッ
って音が浴室に響いた。
息子の頭をぶつけてしまった。
大丈夫!?
とっさに訊いてから気づいた。
ああ、そうか、この子もう死んでるんだ。頭ぶつけたって、痛くも痒くもないか。
お風呂から出したあとは、体を拭いて、パジャマを着せて、髪を乾かしてあげる。
幸い、息子は死ぬちょっと前に散髪に行ってきたばかり。髪を乾かすのにそう時間はかからなかった。
あとは寝せてあげるだけ。寝室までズルズル引きずって、ベッドに乗せ、掛け布団までちゃんとかけてあげる。
ふう、疲れた。
死体を介護するのって、けっこう体力使うのね。
ここでやっと、私がお風呂に入れる。
息子の死体を入れたせいか、あるいは単に時間がたったからか、湯船のお湯は若干、いつもよりぬるくなっていた。
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