第6話
時間は、嫌だと言いたいほどすぐ流れていってしまうもので、もう今は放課後。
今日は姫乃に、謝罪と心に余裕があれば気持ちを伝えたいと考えている。
今まで、姫乃のずっと近くにいた存在、なんでも相談できていたあの時期、こんな俺にでも笑顔で振る舞ってくれるあの天使のような姫乃。
俺は、今日想いを伝える。
断られてもいい、今は俺の気持ちを伝えることが最優先だ。
「裕介〜!おまたせ〜!帰ろうか。」
「うん、帰ろう。」
どうにかして、まずは謝罪しないと。
「な、なあ姫乃」
「ん?なに?」
「今日の朝の件については、悪かったと思ってる。てっきり、雄真さんが姫乃の
彼氏だと思って先走ってた。それであんな態度とってた。ごめん。」
「ああ、雄真の件についてはこっちもごめんね?雄真のこと、そんなに話してなかったから誤解するのも仕方がないよ…って…え?それ、どういう意味?」
いけ!俺!ここで今までの気持ちを簡潔に話すんだ!
「その…俺…さ、ずっと姫乃のことが…その…」
姫乃が俺のことをじっと見ている。
早く言わないと。俺の気持ちはまだ姫乃には届いてない。
「好き…なんだよな…あはは…何言ってんだろうな俺…(笑)」
しばらく沈黙が続いた。気まずい。やっぱり、告白なんてするべきじゃなかったのかな。そうだよな。姫乃も困るよな。突然、幼馴染から告白されて、びっくりだよな。
姫乃にも好きな人がいるのにな。断られて当然だ。
「えっと…今のは忘れてくれ。」
「穴があったら入りたい」とはこのことを言うんだな。俺は、姫乃を置いて、歩きだした。すると、俺は腕を掴まれた。
「待って、裕介」
振り返ると、姫乃が俺の腕を掴みながら、俯いている。
「さっきのは忘れろって言ったろ?(笑)」
「そうなんだけど、一回話聞いて」
俺は、自分にとって納得のいく、つまり失恋の瞬間の言葉を聞くことをわかっていながらも、姫乃の話を聞くことにした。
「私が言うのも少しおかしいんだけどね…その…」
「いいんだよ、断ってくれて。おかしいとかないから。当然のことだから。」
「さっき、裕介、私に好きって言ってくれたよね」
「まあそうだね。」
「ちゃんと返事したい。」
さよなら、俺の恋愛ライフ。さよなら、俺の人生。俺の恋愛物語はこれで幕を閉じるんだ。俺はわかっている。返事は「NO」だ。そう思っていた俺の耳に想定外な返事が聞こえてきた。
――――――私も好き。
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