第5話

 ピピピピッピピピピッ


「ん、、朝か、、」


 俺は昨日のことが頭から離れず、学校に行くのが憂鬱だ。俺は知らなかった。

 彼氏がいたなんて。まあそうだよな。俺みたいなアホ人間じゃなくて頭がいい、

 スペックがいい男と付き合いたいよな。姫乃は”俺は何でも知っている”と言っていたけど、実際なにもわかってない。


むしろ、姫乃のほうが俺のことを知っているだろう。なんだろうな、この絶望に満ちた感じ。もう俺の人生は閉幕だと言わんばかりの体の重さ。そうだよ、俺なんかに叶いっこないんだよ。あんな可愛くて天才なあの姫乃を彼女にするなんてこと。よかった、あんときちょうど雄真とかいう彼氏さんが姫乃のところに来て。

危うく、告白するところだったよ。


 俺は嫌な予感が頭をよぎった。


「そういや今日、、美術、実技じゃん、、」


 改めて言うと、俺の名前は「如月裕介きさらぎゆうすけ」で、姫乃は「木下姫乃きのしたひめの」で、順番が14と15なので、実技の授業は毎回姫乃と一緒なのだ。いつもだったら、他愛もない話ができていたであろう。今は、、というか今日はおそらく無理であろう。


「裕介ー?起きてるのー?起きてるなら一階に降りてきてご飯食べなさーい」

「わかったよ、!」


 高校二年生にもなって母さんに作ってもらってるとかだらしないよな。昼飯だって、母さんに金だけもらって購買のパンとかなんやらで済ませてるし。ほんと、俺って、姫乃がいなくなったら、なにも残んねえんだな。


 俺はなんだか虚しくなってきた。




 __________________



「あ!裕介!おはよー!」

「あーうん。おはよう。」


 あー俺ってほんとダメだなぁ。そこは明るくおはよう!って言ったれよ、裕介、、!

 俺が席についた途端、陽彦が話しかけてきた。


「あれれー?裕介くん、木下さんと喧嘩しちゃったのかなぁ?(笑)可哀想ですね〜(笑)」

「今日に関してはまじで口開かないでくれ陽彦。」

「なんだよ?ただの冗談に決まってんだろ?真に受けんなよ。」


 あー今日はなにもかもがうざい。もうこんな自分が嫌になってくる。


「裕介?どうかしたの?元気なさそうだけど、、、」

「うぜえんだよ!!!!」


思わず言ってしまった。教室がシーンと静まり、みんなが俺の方をじっと見ている。


「え、」

「あ、いや、、その、、違くて、、」


 あーダメだ、ダメだ。俺は完全に姫乃のことを傷つけた。何やってんだよ俺。

 好きな人の幸せは見守ってやるべきだろ、、?


「わりい、、。」


 俺は一言そう言って保健室に向かった。



 __________________



「失礼します、、」

「あらいらっしゃい、どこが具合悪いの?、、ってあら、如月くんじゃないの。

 お久しぶりね。一年生の二学期以来かしら?」

「今日来たのは、先生に相談があって来た。」

「それはまたまた珍しいわね。いいわよ、聞いてあげましょう。」


 俺は、先生にすべてを話した。


「何の話かと思ったら、恋愛話か。なるほどね。今の話に出てきた、雄真って人、

 私知ってるわよ。」

「え、誰なの?!」


 俺は咄嗟に聞いてしまった。


「三年生の木下雄真きのしたゆうまくんよ。」


 木下、、?どっかで聞いたことのある名字だ。


 ……あ!姫乃だ!!


「その木下雄真って人さ、なんか聞き覚えのある名字でさ、、」

「えっと、、、妹の木下姫乃ちゃんのことかしら?」

「妹…?」

「そうよ。雄真くんには妹がいて、その妹が姫乃ちゃん。」


 てことは、俺勘違いしてたのか…?なのに俺はうざいとか言って、、、

 尚更俺は姫乃にひどいことしたんだな…ちゃんと謝らないと。

 俺はすぐさま教室へと戻った。



 _______________



 キーンコーンカーンコーン


「すみません!遅れました!」

「まあセーフにしてやろう。次はないぞ。」

「ありがとうございます。」


 俺はなんとか美術の時間に間に合った。

 俺の隣には案の定姫乃がいた。


「私のこと、綺麗に描いてよね」

「ああ。わかってる。あと、放課後話がある。」

「わかった」


俺は、絵を描くことに集中した。今、姫乃のことを気にしてもなんも解決しないからだ。とりあえず、放課後までに話すことを決めておこう。

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