【幕間1】喫茶店の少女達
~~~~ これからのこと ~~~~
これは、ハルツさんがミドリさんに部屋を紹介したあと、喫茶に戻ったハルツさんを含めたの四人の夢魔の会話……。
ハルツさんが、喫茶と住居を分けるドアから出てきます。
「あ、ハルツちゃんおかえり~。ミドリ君はどうしたの?」
「部屋でゆっくりしてもらっています。それより師匠、ミドリさんのことどうするつもりなんですか?」
「…………」
神無さんは考えるような動作をしながら言います。
「ナシの考えでは、あと一年は我慢してもらう予定かな。予想に過ぎないけど、皐月さんじゃあミドリ君を帰らせるためのモノは作れなそうだし」
「どうしてです?」
「なんで、夢の世界の住人が外の世界に行けないと思う?」
「さあ?」
「答えは簡単。外の世界には、夢の住人が生きていくために必要な夢素がないから」
神無さんはコインさんたちに対して得意げに語ります。
「あと、夢素を含んでいるものは外の世界に出れないという仮説もある。だから外の世界に出るためには、夢素を完全に無くす必要がある」
「ということはつまり、私たち夢魔が外に出ることは絶対に不可能って言うことですね!」
ハルツさんが手のひらに拳をポンッとやります。
ただ、それと同時に頭に浮かんだ疑問を問いかけました。
「でも、その場合ならミドリさんは外の世界に出ることができるんじゃないですか?」
この言葉を聞いた神無さんは待っていましたと言わんばかりに、ハルツさんに人差し指をさしました。
「それ! おそらくそれが皐月さんが勘違いしていたところ!」
「……?」
ハルツさんが頭の上に?マークをのっけるように、首をかしげました。
「ミドリ君がこの世界に来た瞬間に、夢素を含んでしまったんだと思う。皐月さんは、普通の人間が夢素を取り込むとは予想していなかったんじゃないかな? それがミドリ君が帰れなかった原因!」
「ん~となると……、ミドリ君を帰らせるためには、ミドリ君の中から夢素を全部取り出す必要があるって言うことかな?」
「……そんなの絶対に無理なのでは? 夢の世界に夢素がない場所なんてあるんですか?」
「いや、まったくない場所は絶対にない。だからね、夢素をなくすんじゃなくて夢素を取り込ませることにした」
「し、師匠!?」
「それはつまり……」
神無さんの発言に、ハルツさんとコインさんは驚いた表情をしました。
なぜなら、夢素を取り込ませるという行為は……
「うん。ミドリ君を夢の世界の住人に近づける」
……この発言の後も神無さんたちの話し合いは続き、空がオレンジ色に変わり日が暮れるまで続きました。
話し合いが終わるころには、喫茶ヴァルプルギスは閉店の時間になっていました。
~~~~ 眠れる翠 ~~~~
話し合いが終わると、ハルツさんと神無さんはミドリさんのいる部屋へと向かい、コンコンとノックをすると静かにドアを開けました
「ごめん、ミドリ君。さすがにちょっと休ませすぎたかな……って寝てるな」
ミドリさんはベッドですぅすぅと綺麗な寝息を立てながら、目を閉じて眠っていました。
「全然知らない環境にいきなり連れてこられたわけですし、疲れていたんでしょうね。ゆっくり休ませてあげましょうか」
「……そうだね」
二人はまるで小さな子供を見守る両親のような優しい笑顔を浮かべながら、ゆっくりと扉を閉めました。
「……で、夕食はどうする?」
「今から作りますけど……、ミドリさんの分も一応作っておきましょうか」
「だね。書置きでも置いておけば、起きたときに探して食べるでしょ」
「ふふっ。そうですね! じゃあ、今から作りますね! ……師匠も手伝ってくださいよ」
「はいはい、わかってますよー」
軽い会話をしながら彼女たちは一階に降りていく。
そのころにはもう、空には月が浮かぶ時間帯でした。
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