127. 2024秋アニメ振り返り〈後編〉【アニメ感想】『妻小』『ぷにる』

 秋アニメの振り返り、後半2作品です。



◆『妻、小学生になる。』


 原作既読。登場人物エピソードのオミットや改変はありつつ、エッセンスを残してテーマを描ききったアニメ化であったと感じられました。


 ただ、省略部分が広範かつ多岐に渡っているため、初見の視聴者がキャラクターから受ける心証に大きく影響したのではないかと思われます。



 最も改変の割りを食っていたのは夫の圭介けいすけで、盲目的な側面がやや悪目立ちしている印象でした。妻のたかがより成熟・達観した描かれ方をしていたのとは対照的です。

 とはいえ、原作読者や、可能な限り行間を読むタイプの視聴者にとっては、さほど問題ではなかったかもしれません。


 ともすれば毒親としてヘイトを集めそうな千嘉ちかの心情に寄り添い、内面的な成長を見守らせるよう、視聴者の感情移入を促す作りはとても自然でした。

 麻衣まいのお相手となるれんの誠実さや包容力にも、原作を読んだとき以上に好感を抱きます。



 終盤2話のストーリー運びは非常に丁寧で、それまでの描写不足が悔やまれるほどでした。ともあれ、綺麗な結末は作品全体への好印象に繋がった気がします。


 総合的には作画・演出、役者さんの演技にいたるまでハイレベルで、終始そつのない仕上がりでした。とくに悠木碧さんによる貴恵と万理華まりかの演じ分けには驚かされました。




◆『ぷにるはかわいいスライム』


 原作ファンとしても期待を上回るハイクオリティ。本編は勿論、OP・EDにも惜しみなく力を入れているのが伝わってきました。


 ぷにるの多彩な変身に合わせた変幻自在の演技、さらには主題歌までも歌いこなす篠原侑さんの「原作で聞いた声」感たるや、理想的なアニメ化ぶりを端的に象徴しています。


 本作の2大奇人・きらら先輩と宝代ほうだいさんの的確なキャスティングにも拍手を送りたいです。狂気じみた母性と庇護欲、暴走のオン・オフ切り替えの巧みさは、稀に見る怪演として記憶に刻まれました。



 底抜けのギャグと、ほんのりスパイスとなるシリアス成分の明暗両面を際立たせる演出、さらにはエピソードの自然な再構成も見事です。


 何かとぷにるに対する当たりがキツいコタローですが、その実幼少期のトラウマで自縄自縛に陥っている切なさが画面越しに伝わってきました。



 徹頭徹尾非の打ち所のない完成度ですが、とくに第7話は出色の出来でした。夏休みの日常が、独特な作画と演出で描かれていたのが強く印象に残ります。


 喫茶店でのコタローときらら先輩のやり取りは、背伸びをやめて自然体になることの大切さが、サイフォン越しの画面→取り払われる描写によって表現されていて、はっとさせられました。



 今期はアニオリエンドで締め括られましたが、すでに決定している2期オープニングでどんなオチをつけるのかが、今から楽しみです。

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