117. わが旅『ドラゴンクエスト』シリーズ(2)導かれし者たち【ゲーム感想】
真野魚尾(まの・うおお)です。ドラクエシリーズ回想録、前回の続きへ参ります。
◆『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』
ファミコン版、PS版をプレイ。初めて自分で買ったドラクエで、
その思い入れもあって、個人的お気に入り度はシリーズ不動のNo.1作品です。
◇魅力ある味方キャラクター
主人公は初めての男女選択制採用でしたが、パッケージ絵のビジュアルに
アリーナ姫。戦うヒロイン大好きっ子としては永遠の憧れです。一国の王女が拳と蹴りで真っ向からバトルするなんて! 可愛らしい見た目に反しての傍若無人ぶりにも深く感銘を受けました。
ちなみに久美沙織氏の小説版(※)ではボクっ娘でした。こちらのキャラ付けも味わい深いです。
個人的趣味ついでに、モンバーバラ姉妹はミネア派です。奥ゆかしい
※DQ4小説版といえば、いのまたむつみ氏による表紙絵のパズルを持っていたような記憶があります。何かの応募特典だったかと思いますが、残念ながら度重なる引っ越しでどこかへなくしてしまいました。
◇個人の見解です
本作は敵役も魅力的です。オリジナル版ではラスボスだった魔族の王ピサロは、PSでのリメイク版で仲間入りも果たしました。
追加シナリオとなった第六章。死者を蘇らせる世界樹の花を、勇者は幼馴染みのシンシアではなく、ピサロの恋人ロザリーに使いました。
つらい選択だったと思いますが、同時に納得もしました。個人的な感情よりも大義を優先するからこその勇者なのです。この高潔な意志がマスタードラゴンの心を動かし、エンディングでの最後の奇跡を生んだのだと察します。
勇者とピサロの立場はそもそもが相容れないものです。許す許さないの問題ではなく、あくまで利害の一致による一時的な協力なのです。きっと本人たちも、お互いそのつもりでいたことでしょう。
結果的にエビルプリーストという裏切り者を
◇オリジナル=ファミコン版に話を戻します
そんなイケメンのピサロ様でしたが、急にデスピサロとかいうヘヴィメタルな名前を自称し出したのはちょっぴり衝撃でした(今では一周回って格好良……くもないこともないです)。
最終戦でのグロ演出もトラウマ寸前のショックながら、進化の秘法のおぞましさをありありと表していて、意義深く感じます。
余談ですが、配下の中ボス・アンドレアルは魔術書『レメゲトン』(=ソロモンの小さな鍵)に記された悪魔アンドレアルフス(孔雀のような見た目をしているらしい)が元ネタかな、とは当時から思っていました。
話は飛んで、カジノのコインを増やす裏技は毎周活用させてもらっていました。忘れないように数字をメモした紙を、ソフトの箱に入れていたのを思い出します。
3章トルネコ編での仕込みも恒例でした。旅立ち前に自店で破邪の剣を買い取るまで粘ったり、後の勇者との合流に備えて高額アイテムで持ち物をいっぱいにしておいたり……皆さんもされていたのではないでしょうか。
◇ドラクエはプログレ
巨匠・すぎやまこういち氏の手掛けた、冒険を彩る素晴らしい音楽にも感動の連続でした。
章ごとに入れ替わるフィールドBGMはどれも心に残ります。
特にお気に入りなのは4章です。専用バトルBGMと併せて、子供には耳馴染みのなかったジプシー音楽をゲームに落とし込み、こうも格好良く聴かせられる手腕に感服します。
「のどかな熱気球の旅」「海図を広げて」はクラシック音楽で言うところのロマン派ないし印象主義の影響が色濃く感じられ、これまでにないスケール感に圧倒されました。
「謎の城」(天空城BGM)も大好きな曲の一つで、後年「ジプシー・ダンス」や「ジプシーの旅」などとともに、自分で打ち込みまで試したほどです。
この曲はファミコンと同じ3トラックで、音色をハープにするとシンプルでしっくりきた覚えがあります。
また、ベースの練習としてエチュード的に弾いていた時期もありました。「気球」「海図」と同様、テンポ・ルバートが効果的に用いられている印象です。
どの曲も変拍子がふんだんに盛り込まれているのにもかかわらず、メロディ展開に無理がなく親しみやすいのが驚異的です。
これらの音楽が、後に真野をプログレッシヴ・ロックに傾倒させる下地を作ったのは間違いないと思われます。
群像劇として章立てされたシナリオや、多くのキャラクターたちが織り成す関係性は、緻密でありながら想像の余地も残してあるのが実に心憎いです。
ゲームを正史として受け止めつつ、別の可能性にも思いを馳せる想像力を、本作は大きく養ってくれました。
『ドラゴンクエストIV』は真野の創作人生において、とても重要な位置を占める作品であることは疑いようもありません。
(つづく)
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