61. 振り向けば『ゲゲゲの鬼太郎』6期〈後編〉【アニメ感想】
『ゲゲゲの鬼太郎』アニメ第6シリーズ(以下「6期」)の振り返り、後半戦へ参ります。
〈前回〉
★58. 振り向けば『ゲゲゲの鬼太郎』6期〈前編〉【アニメ感想】
https://kakuyomu.jp/works/16817330658975712480/episodes/16817330667927233227
◆『ゲゲゲの鬼太郎』6期(2018年4月~2020年3月)
6期の作風はコメディ、ホラー、社会風刺、アクション、ヒューマンドラマまで、実にバラエティに富んでいます。
各話ごとの特色もそうですが、一話中に詰め込まれた複数の要素が調和し、相乗効果を生む構成力の高さも強みだと感じます。脚本/演出に注目してみるのも、ワンランク上の楽しみ方と言えるかもしれません。
◇個人的傑作選〈後編〉
後半はシリーズ完結となる第97話までから、計10話を厳選しました。
★第54話「泥田坊と命と大地」
妖怪と人間、互いの事情は両立できない。子どものため、未来を創る――戦いを決意する父親の矜持。狭間で苦悩する鬼太郎が出さざるを得なかった結論とは。シリーズ屈指の重いテーマと、濃密なストーリーが胸にのしかかります。
★第56話「魅惑の旋律 吸血鬼エリート」
成り上がり吸血鬼とねずみ男、お互いへのシンパシー。鬼太郎とねずみ男の友情。どちらも本物であったと信じたいです。
★第64話「水虎が映す心の闇」
行き過ぎた復讐の行方は、重荷となる全てからの解放だった。大切なものまで失ってしまった後悔を胸に、己の手でけりを付けようとする翔子の決意を
★第65話「建国!? 魔猫の大鳥取帝国」
ブレーキ崩壊アクセル全開のハイパーギャグ回。もはや狂気です。
★第68話「極刑! 地獄流し」
罪を犯した男の地獄体験は手加減なしのガチホラー回――と見せかけた感動回。「上手に生きようとしなくてもいい」「いくらでもやり直せる」飾らぬ言葉が深く心に響きます。ネタばらしのカタルシスに
★第78話「六黒村の魍魎」
生と死の狭間に見る刹那の夢。真に夢を叶えられたのは、逝ってしまった者なのか、遺された者なのか。深き業と深き愛は善悪を超えて。
★第81話「熱血漫画家 妖怪ひでり神」
妖怪漫画家と人間編集者のやり取りが熱い。俺たちは紙切れじゃなくて魂をぶつけ合っているんだ! 涙あり笑いありの熱血コメディに刮目すべし。
★第83話「憎悪の連鎖 妖怪ほうこう」
始まりは純粋な善意、呼び寄せるは自覚なき悪意。TAKUMIとほうこう、分かり合えていたのに……。作中に救いはないけど、視聴者が得るものはある、そんなお話。
★第93話「まぼろしの汽車」
まさかのタイムリープもの。ねこ娘の叶わぬ愛が切ない。ですがその選択は何よりも尊く。今は無理でも、いつかきっと……願わずにはいられません。
★第97話「見えてる世界が全てじゃない」
妖怪対人間の戦争は絶望の局地へ。仲間たちが集結する王道展開が熱い。ねずみ男の言葉は水木先生の、まなの言葉は水木さんの想いをそれぞれに想起させる素晴らしい演出。鬼太郎、君のことは「忘れない」。
以上、あれもいい、これもいいの葛藤を重ねた上の選出でした。勿論これら以外にも、6期には印象深いお話がいっぱいです。
◇主役・脇役・敵役……三役揃い踏み!
6期と言えば、洗練されたキャラクターデザイン。中でも代表的なのは、ねこ娘です。日常とバトルの両面で大活躍する、格好いいヒロインを最後まで演じきってくれました。
主人公の鬼太郎も、クールな中に熱い信念を持った新世代のヒーロー像を確立しています。妖怪も人間も排除しない(第56話より)――他者に寄り添おうとするがゆえに、繊細で脆い部分もまた彼の魅力です。
そんな二人と心を通わせた人間サイドのヒロインが犬山まなです。物語を引っ張ってゆく積極性と、等身大の感性は、シリーズを大いに盛り上げてくれました。
2年目を飾る「地獄の四将編」では、石動零のダークヒーローぶりや、伊吹丸との関係が心を熱くします。1年目に
敵側では「西洋妖怪編」のヴォルフガングや、最終章でのぬらりひょんも、一筋縄ではいかないヴィラン役の魔性を存分に発揮していました。
そんなキャラクター関連では、
・『ゲゲゲの鬼太郎 CHARACTER BOOK ねこ娘大全』
・『ゲゲゲの鬼太郎 CHARACTER BOOK ねずみ男大全』
・『ゲゲゲの鬼太郎 ゲゲゲ ヒロインの森』
というムック本が、紙と電子書籍の両方で発売されています。
描き下ろしイラストや、過去シリーズ含むスタッフの裏話まで集録された充実の内容は、副読本として最適です。
6期『鬼太郎』放送終了から数年経った現在も、心の中ではストーリーやキャラクターたちが息づいている感覚さえ覚えます。本当に満ち足りた2年間でした。
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