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22. 時代劇を観ていました featuring 必殺シリーズ【回顧録】

真野魚尾(まの・うおお)です。近代ファンタジーを好んで書いています。


現在連載中のシリーズも、元々は普通に西洋風の舞台にする予定でした。

ですが、何やかんやで幕末~大正の雰囲気まぜこぜの和風ファンタジーになってしまった経緯があります。


思えば、中学の頃に書いた西洋風ファンタジーですら、主人公は日本刀に鉢金はちがねという和風ファッションでした。


何故、真野の自作には事あるごとに和風要素が紛れ込んでしまうのか。

そう考えたとき、幼い時分に親しんでいた時代劇の影響が大きいのかも、と思ったのが本稿をしたためるきっかけでした。




◆夕暮れのルーティーン


小学校低学年の頃です。当時住んでいた地域では、夕方に『必殺』シリーズの再放送がされていました。月曜から金曜までの学校帰り、夢中でTVにかじりついていたのを憶えています。


『仕掛人』『仕置人』『仕事人』は勿論のこと、『からくり人』『仕舞人』『橋掛人』……などなど、かなりの作品を視聴したはずです。『剣劇人』は夜の本放送をリアルタイムで観ていました。


どのシリーズも子供心に与えた衝撃は凄まじく、特に『仕事人』以降の、流行り物を節操なく取り入れた破茶滅茶な作風は、時代劇の古くさいイメージを覆す画期的なものでした。




◆和製ダークヒーローの洗礼


晴らせぬ恨みを晴らします――とは言うものの、仕事人は決して正義の代行者ではありません。あくまでも金を貰って殺しを請け負う汚れ仕事です。


卑劣な輩を卑劣な手段で不意討ちし、闇へと葬る。成果を誇示もしない。ここに確固とした悪の美学が見出せます。


『必殺』の顔である中村なかむら主水もんどは、真野が幼心に憧れたダークヒーローでした。昼行灯と暗殺者のギャップにやられました。撮影時に偶然生まれたという、和服にマフラーのスタイルもお洒落ですよね。


シリーズごとに入れ替わるメンバーもみな魅力的でした。

かんざしに三味線、組紐、投石機など、バリエーション豊富な殺しの技にもワクワクです。リアリティ度外視のハッタリが利いた演出は、エンタメ斯くあるべしと今でも思います。




◆人生のサウンドトラック


『必殺』はサウンドトラックも非常に耳に残ります。「夜霧を裂いて」「中村主水のテーマ」「中村家のせんりつ」などがお気に入りです。ライフハックとして「仕事人出陣」を脳内BGMに出勤すると捗りますよ。


三田村邦彦「想い出の糸車」、鮎川いずみ「花の涙」、藤田絵美子「さよならさざんか」などの主題歌は今でも歌えるかも? それらがアレンジされた各シリーズ殺しのテーマも秀逸でした。


基本形の「必殺!」(必殺仕掛人)を始め「暗闘者」(必殺仕事人III)、「冥土の鈴か、地獄花」(必殺仕事人V)あたりが自分の中では定番です。やはりトランペットのイントロがあると気分がぶちアガります。




◆「時代劇」だって言ったじゃん


時代劇と言いつつ『必殺』シリーズのお話に大半を費やしてしまいました。

勿論、他にも観ていた番組はありますが、主に単発か、数日間連続のスペシャル番組が多かった気がします。


憶えている限りでは『宮本武蔵』『ご存知!旗本退屈男』(いずれも北大路欣也)、『眠狂四郎』(田村正和)、『丹下左膳』(藤田まこと)、他には年末放送の『白虎隊』や大河ドラマの『独眼竜政宗』(渡辺謙)などが印象に残っています。


連続ドラマでは『三匹が斬る!』シリーズ、『名奉行遠山の金さん』(松方弘樹)の2つを好んで観ていたのが思い出されます。『三匹~』の千石(役所広司)がワイルドで格好良かったです。『金さん』が啖呵を切る口上も素敵でした。


『水戸黄門』『暴れん坊将軍』『銭形平次』『長七郎江戸日記』などは、おそらく裏番組などの関係であまり観られなかった気がします。再放送などで断片的に視聴していたはずです。




◆時代劇全盛期の終わり


中高生になると、時代劇を観る機会も少なくなってしまいました。1990年代以降、TV放送が減ったのが直接的な原因かと思われます。


一方で真野自身の視野が広がり、興味が他へ移ったことも大きいでしょう。

それでも、時代劇が幼心に刻んだ外連味の極意は、今でも真野の創作全般に深い影響を与えているのは確かです。




好きな仕事人:中村主水(藤田まこと)、畷左門(伊吹吾郎※1)、飾り職人の秀(三田村邦彦)、何でも屋の加代(鮎川いずみ)、三味線屋の勇次(中条きよし)、おとわ/おりく(山田五十鈴)、西順之助(ひかる一平)、組紐屋の竜(京本政樹)、花屋/鍛冶屋の政(村上弘明)、はぐれ仕事人の参(笑福亭鶴瓶※2)、かげろうの影太郎(三浦友和※3)、経師屋の涼次(松岡昌宏)、からくり屋の源太(大倉忠義※4)


※1 おでん屋バージョンが好きです。

※2 ぽっぺん(ビードロ)の人です。

※3 南京玉すだれの人です。

※4 殺しへの苦悩と悲劇的な最期がドラマチックでした。



好きな脇役:中村せん(菅井きん)、中村りつ(白木万理)、筆頭同心田中(山内敏夫)、玉助(梅津栄※)


※「順ちゃん!」の人です。




  *  *  *




本稿冒頭で挙げた中学時代の一作を恥ずかしげもなくアップしています(実はめちゃくちゃ恥ずかしいです……が、これで怖いものはなくなりました!)。

日本刀&鉢金姿のジェロム・フォン・フィッツジェラルド(19)が主人公のラノベ風ファンタジーです。


◆Ragnarök ~ラグナレク~〈The Inner Light〉

https://kakuyomu.jp/works/16817330655632949186



それから約30年後に書いた最新作が現在連載中です。続編ものですが、今作からでも入れるよう工夫してあります。和洋折衷のファンタジー群像劇です。


◆くにつほし九花烈伝 ~鋼鉄レトロモダン活劇2~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653807506663

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