真野魚尾（まの・うおお）です。追いかけ中のアプリ/WEB漫画、前回の続きです。

【マガポケ／コミックDAYS／ヤンマガWEB】

◆『イジらないで、長瀞さん』ナナシ

ラブコメ。気弱な先輩男子が後輩女子から徹底的に追い詰められる第1話で脱落者多数（推定）。やがて始まった歪な関係から長い時間をかけてお互いを高め合う尊い仲へと発展するとは、初期からのファンでも予想し得ませんでした。

基本主人公視点で進むのでヒロインのモノローグは無し。その代わりコロコロと変わる表情の描き方が秀逸で、移り変わる心情を緻密に繊細に表しています。個性的な脇役たちと繰り広げるドタバタコメディもいと楽し。

◆『あらくれお嬢様はもんもんしている』木下由一

ツンデレ同士のラブコメ。少女漫画のコメディと少年誌のエロコメを両方全力でぶち込んだおバカな笑いと胸キュン（死語）のジェットコースター。欲望に忠実な椿様可愛い。実は効いてる起立君可愛いけどかわいそう。赤飯炊く準備して読むべし。

◆『おっちょこドジおねえさん』倉地千尋

前作の百合コメ『清楚なフリをしてますが』が好きで作者買い。Twitterでバズっていたネタが連載化。年下男子を相手にドジだけど（ドジだから？）頑張って見栄を張るおねえさんを愛でよ。脇を固めるメンツもツワモノ揃いなり。

◆『ごくちゅう！』〈完結〉こんぱる＆ふじしまペポ/草下シンヤ/雨宮

女子刑務所を舞台にき◯ら系ゆるふわ百合を再現（約1名ガチ百合が混じってますが）。コメディながら「獄中」なのでシビアなとこはシビア。さすが経験者が関わってるだけあるぜ……。夏川さんポンコツ可愛くて好き。

【マンガクロス】

◆『僕の心のヤバイやつ』桜井のりお

ラブコメ。中学生特有の心の揺れの描写が素晴らしい。自分の中に芽生えた度し難い感情、殺人衝動だなんて誤魔化してるけど、それが恋なんだと自覚した瞬間、少年を取り巻く世界が変わってゆく。とりあえず1巻、読むべし。

細かい仕草や小物の配置などで関係性を暗示する作り込みへのこだわりはミステリ作家ばり。個人的にですが、この作品のウリは恋愛のエモさの演出と、作者お得意のギャグ（下ネタ含む）の両立にあると思っています。

◆『もういっぽん！』〈完結〉村岡ユウ

女子柔道。強豪でも常勝でもない主人公たち。勝利ではなく成長、結果ではなく過程に価値を見出せる読者には刺さる内容。試合はご都合無しでシビアな一方、敵味方の垣根を越えた交流が時に、熱く時にあたたかい。自他共栄の精神。

◇百合の波動とは……

真野が新しい作品を知るきっかけとして、表向き百合ではなくても何となく「百合アンテナに引っかかって」「百合の波動を感じて」読み始めるというパターンがちょくちょくあります。

表紙とかイメージイラストとかにいる女の子たちの距離感とか、視線とか……分かってくださる方がいらっしゃるとよいのですが。まるで主観的な感覚なので上手く説明がしづらいです。

でもこの第六感（気のせいとも言う）のおかげで『もういっぽん！』のような、それまで馴染みのなかったジャンルに触れるきっかけにもなるので、百合好きでよかったと思っています。

◇単一視点ラブコメの醍醐味

今回紹介したラブコメ『イジらないで、長瀞さん』と『僕の心のヤバイやつ』は真野が連載初期から追っている思い入れ深い作品です。

『長瀞さん』は「ヒロインは一体何を考えてるんだろう」、『僕ヤバ』は「主人公は何故こんな考え方をするんだろう」というそれぞれに癖の強い冒頭部が、真野にとっては強力な掴みとなりました。

これら2作に共通する点として、ヒロインの心情が直接は描写されないことが挙げられます。表立っては語られない気持ちを、視点人物である主人公に寄り添いながら読み取っていく面白さこそが醍醐味である気がしています。

本テーマもやっと折り返し地点です。まだ続きます。

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