5. 私論『鬼滅の刃』【漫画感想】

真野魚尾 (まの・うおお)です。

ヘヴィメタルとプログレッシブ・ロックばかり聴いています。

プレステではなくサターンにお年玉を注ぎ込みました。

コロコロよりもボンボン派でした(小学生の頃お隣の家でよく読ませてもらっていました)。

生まれてこの方、流行に対するセンスはゼロです。



しかしそんな真野も、ごくたまに流行に付いて行ける瞬間がやって来ます。最近の例ですと、今回取り上げさせていただく『鬼滅の刃』です。




◆『鬼滅の刃』吾峠呼世晴


当時真野は小説の構想を練るため、大正時代についてネットで調べていました。検索結果にたびたび付随して名前の挙がる本作を、何の気なしに読み始めたのが出会いです。ちょうどアニメ化前後の頃でした。



◇竈門兄妹


兄妹<姉弟好きな真野も、この二人の関係のエモさには脱帽です。アニメ化以降に各所で目にする、最序盤の鬼化した禰豆子を炭治郎が庇っているイメージイラストがとてつもなく好きです。


物語を最初から最後まで追いかけ、振り返り、その根底にあるテーマを知った後ですと、公式で示された二人の健全で、清々しく、強固な関係性こそがまさに正解だったのだなと思います。


一方で、この兄妹の放つ何か言い知れぬ魅力は、あり得たかもしれない別の可能性を想像させもするのです。インモラルで刺激的な共依存関係や、バディものとして最後までニコイチで戦う路線もちょっと見てみたかった気はします。



◇鬼はメタル


敵が如何にして鬼と化したのか、そこに至るまでのドラマの重厚さも本作の醍醐味です。思わず共感してしまう過去、同情はするけど許してはいけない、こいつはこの世に存在してはいけない(以下略)など様々です。


中でも真野がお気に入りなのが鳴女です。ファンブックで明かされた鬼化エピソードがデス/ブラックメタルそのもので、すっかり虜になりました。想像しただけで琵琶の音の奏でるトレモロリフが聴こえてくるかのようです。


このように、本編では一切出て来ない沢山の裏設定を単行本の合間や関連書籍で知るのも本作の楽しみ方の一つです。

(ちなみに鳴女のエピソードは公式ファンブック・弐の152頁にあります)



◇狂気でも愚行でもない


ネタバレを避けているので詳しくは書けないのですが、これだけは言っておきたいことがあります。


あの時のお館様、ああまでしなければいけないほど狡猾で強大な相手だったのです。そこまでの覚悟に妻も子も寄り添ってあげたかったに違いありません。ただ愛する人を一人で行かせたくはなかっただけなのです。


最前線で刀を振るうだけが戦いではないこと。人が人の心に寄り添うことが世の中にとって大きな意味を持つこと。そういった、理屈だけでは見えてこない本質的な部分こそが人々を本作へと惹き付けて止まないのではないでしょうか。



◇一貫したテーマ


前々回の『北斗』でも触れましたが、真野は長編の締め括りというものを重要視します。その点において『鬼滅の刃』はあるべき形を示した理想的な最終話になっていると、本誌・単行本それぞれを読んだ時点で思いました。


不老不死・強靭で再生可能な肉体を持つ鬼とは比べるまでもなく、人は脆弱で儚い生き物です。なればこそ仲間から仲間、世代から世代へと受け継がれていく想いが重く尊いものとなり得るのです。


あのエピローグに立ち会った皆様はご存知のはずです。炭治郎たちの想い、受け継がれていましたよね。ちゃんと未来へ繋がっていましたよね。今を生きる私たちだからこそ受け取ることができる最高のプレゼントではないでしょうか。



好きなキャラ:竈門禰豆子、不死川実弥、戦いに散った名もなき隊士たち

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