3. いきなり『北斗の拳』【漫画感想】
真野魚尾 (まの・うおお)です。前回の流れから何となく取り上げてみた第3回目のテーマはこちらです。
◆『北斗の拳』武論尊/原哲夫
ネタバレはなるべく避けていますが、ある程度既読者向けです。以下、細かい内容はうろおぼえの個人的感想です。
◇エンターテイメント
皆様ご存知、昭和を代表するヴァイオレンス・アクション……なのですが、登場するモリモリマッチョマンたちが実は一様にメソメソ・ウジウジ女々しいのが最高に愛おしく、味わい深かったりします。
いいえ、茶化しているわけではありません。表層だけを見ると勧善懲悪、最強主人公が無双する爽快エンターテイメントですが、その実態は愛に生きる漢たちのヒューマンドラマなのです。
真面目な話、主人公ケンシロウは、真野が子供心に植え付けられた「悲しみを背負ったヒーロー」像の象徴となる一人です。悪へ向けられる激しい怒りの底には、深い悲しみが必ずあるのです。
外連味たっぷりに誇張された多種多様な拳法の描写も、何気に武侠 (※)好きとなるきっかけであったかもしれません。秘孔を突いて爆死……なんてアイデアは斬新かつ個性的すぎて、未だ容易には真似できないでしょう。
※カンフーアクションを見せ場にした中華風冒険ドラマみたいなものです。
◇人間讃歌
爆死はともかく、真野が漫画・アニメの残虐表現を比較的受け入れられるのは『北斗』に慣れ親しんでいたおかげと思われます。トラウマだって立派な学習、一概に否定するものでもないというのは持論です(他人に強制はいけません)。
ヴァイオレンス作品なので、当然ながら人がいっぱい死にます。味方側も例外ではなく、それぞれの章ごとにメイン級のキャラがふさわしい花道を辿って退場していきます。
「死に様もまた生き様である」という美学が真野の中にあるのは、この『北斗』に端を発していると言えます。この精神は後の『ジョジョ』などにも通底しているように感じられます。
現実には踏みにじられがちな、人としての尊厳を高らかに謳い、エンタメとして昇華させているのです。冷静に見るとトンチキな展開も結構ありますが、少なくとも記憶には刻まれます。濃く、深く。
◇エピローグ
人によって盛り上がる章は様々だと思います。真野も〇〇編が好きだとかはありますが、ここで注目したいのはラストです。それまで語られてきた物語の最終章にふさわしい構成がしっかりとなされているのです。
ずっとケンをそばで見てきた仲間たちにフォーカスが当てられています。「バット、お前も『こっち側』だったか……(愛おしき漢たち的な意味。本稿冒頭参照)」と感慨深い気持ちになります。マミヤの見せる侠気にも胸を打たれます。
エンドロール風の演出がされたエピローグ部分も原点回帰とばかりにひたすら熱く、脳内BGM再生不可避です。愛で空が落ちて来たり、俺の鼓動早くなったりします。熱い心鎖で繋いでも無駄です。指先一つでダウンします。
活殺自在の北斗神拳、ここに在り――。この最終章に込められたカタルシスは、長い本編をずっと追いかけて来た読者へ贈る究極のご褒美と言っても過言ではないと思います。
◇さらに個人的な思い出
『北斗』との出会いは漫画か、アニメが先だったかは思い出せませんが、小学校低学年時なのは確かです。レイとトキ推しの母親がコミックスを買って来たのは憶えています。私もレイは大好きなキャラです。
トキやシュウも良いのですが、博愛精神が眩しすぎて、どちらかといえば遠くから拝みたくなる感じです。その点レイは、たった一人の女性に自分の愛を貫く姿勢が素直に格好いいのです。
好きなキャラ:レイ、フドウ、アイン
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