第23話 ゲートの先(ある騎士の場合)

 ――――作戦決行の朝。軽めの朝食を済ませたボクは、いつものように藍色あいいろの鎧を身にまとい、腰の両側には使い慣れた二本の手斧トマホークを携えてから例のゲートが設置された地下室へ訪れていたのだが……


「騎士殿、改めて訊くが本当に良いのか? ここで作戦を中止しても其方そなたには何の否もないのだぞ?」


 数日前と同じように関係者一同が揃うなか、未練たらしくこう訊いてきたの王だ。どうやら、未だにボクを思い止まらせたい気持ちが残っているらしい。


「お心遣い感謝します王よ。ですが、既に決めたことですので」

「……そうか。余計なことを言ってすまなかったな」

「いえ、大丈夫です」


 この期に及んでこんな会話をするなんて、この人らしいな。


「王、そろそろ時間です……」

「う……うむ……」

「騎士殿も……」

「わかりました」


 王の側近に促されてゲートの前に立つ。その時だった。


「あの、騎士様……その、どうかお気をつけて下さい!」


 少しおどおどした感じで激励げきれいしてくれるのは六、七歳くらいの黒髪の女の子だ。


「ありがとう、お嬢ちゃん。キミに……キミ達に素敵な未来をプレゼントするためにがんばって来るよ」


 気の効いたセリフになれたかは不明だけど、女の子が素敵な笑顔で応えてくれたのは素直に嬉しい。


「フフフ……この笑顔のためなら、いくらでもがんばれるな」


 自分のやるべきことを改めて肝に銘じたボクは、再びゲートへ。


「では、いきます……」


 皆から見守られる中、慎重にゲートに足を踏み入れた瞬間、目映い光が全身を包み込む。そして、気がつくと……


「――――ここは?」


 立っていたのは、質の高い大理石だいりせきで造られたとみられるどこかの通路。


「これは……城の地下から移動したのは確かみたいだけど?」


 周囲を見回すと、通路の両突き当たりには扉が見えた。


「取り敢えずは近い方へ進んでみるか……」


 扉を開けると、その先には六角形の大広間があった。


「こんな場所が……アレは!?」


 中央に注目すると台座が設置されており、そこには……


「剣!? もしかして、魔王を倒せる剣なのか!?」


 駆け寄って確かめようとした途端、突如として狼の巣穴にでも迷い込んだ感覚が襲う!


「この殺気、誰かいるな!?」


 すかさず二本の手斧を両手に取って警戒をする!


 ギギギィ……扉が開く音? ここで改めて周囲を見回すと、広間には自分が使ったものを含めて六つの扉が存在していたことに気づかされる……っで、その内の一つから今現れたのは、紅い瞳に短い銀髪。青く美しい角を生やした少女だった!


「なるほど。彼女が守人か」


 まだ距離があるので、ボクは手斧を左右に持ったまま動かない。


 だが守人の方は、そんなことはお構いないしにと猛スピードでの突進を仕掛ける!


「来る!!」


 ついに始まる守人との戦い。これが人類に希望をもたらすのかは……まさに神のぞみが知るだ!!

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