第16話 倉庫のエリアにて……(守人の場合)

 ある日の昼下がりに唐突に思った。


「片付けよう!」


 たまに……極たまにだが、無性にこういった気分になる今の私は、六つのエリアの一つである倉庫のエリアへやって来ていた。


「さて、どこから手をつけるかな? 何せ一五〇年分くらいはあるからなぁ……」


 ウンザリして辺りを見回すと、“倉庫”というだけあって、様々な物やガラクタが放置……されているのがみて取れた。

 また中でも断トツに量が多いのが食料。これは自然のエリアにある森で採取したものがほとんどになるが、なかにはこの間の様に偶然ゲートから迷いこんだ猪みたいな獣から作られた薫製肉なども保存されてある。

 それから侵入者達が遺していった装備品も多く保管しており、なかでも一際に思い出深いのが棚の上に見えてる細長い一メートル程の金属の筒と木材等を加工した部品を組み合わせて作った“じゅう”という武器だ。


 確かこれは、かれこれ四〇年くらい前に戦った侵入者が使っていたもので……


 ――――四〇年前、当時の私は今と変わらずにこの天空城で剣の守人をやっていた。


 ただその時代、既に魔王は復活していたものの、今よりかは少しだけ平和な時代でもあったために、訪れる者達の目的は剣よりも単純に冒険や腕試しのたぐいになるのが多かった気がする。


「もっとも、全員がバルコニー送りになったのは言うまでもないけど……」


 けれどそんな連中のなかで、一人だけ異才いさいを放つ者がいたことを記憶している。


 あの日、たまたま自然エリアで朝食……もしくは昼食をとっていた私は突如、侵入者の気配を察知したのだが……


「い、今のは一体……?」


 急いで残りのご飯を頬張って周囲の警戒する……っが、最初の一瞬以降は何の気配も感じられない。


「もしや、ゴースト幽霊か?」


 そんな突拍子とっぴょうしもない考えも過ったが、その場合は微弱ながらでも独特の気配を感じるのでその可能性は排除はいじょする。


「でも、そうなると今の気配は一体……?」


 張り詰める緊張感のなか、無意識に額から流れる汗を拭う……その時だった!


 パァーーーーーン!!


「この乾いた破裂音……まさか“銃声”ってヤツ!?」


 瞬時に判断した私は、近くにあった岩陰へ素早く身を隠す!


「お、驚いた……まさか“銃”なんて骨董品を持ち込むヤツがいるなんて!」


 知識としては書庫にある本で把握していたけど、まさか実際に戦うことになるとは思ってもいなかった。


「これはちょっと、迂闊うかつには動けないわね……痛っ!」


 左の耳に鋭い激痛いたみが走る!


「ったぁ……え!?」


 軽く触ってからすぐに気づいた。


「や、やってくれる……」


 自分の左耳が半分失くなっていたことを!!

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