【精六さん小咄】ー呼ばれていたかもしれないー
田舎だから、かも知れませんが、ちょっと大きめのスーパーに行くと
呼び出しの館内放送をよく耳にします。
「(ピンポンパンポーン♪)お客様のお呼び出しを申し上げます。
〇〇(地名)4丁目からお越しの△△様、お連れ様が2Fサービスセンター前で
お待ちです」という“おとなの迷子呼び出し”もありますし、
「(ピンポンパンポーン♪)お客様のお呼び出しを申し上げます。
さきほど2F手芸用品店にて赤い毛糸玉10個入りをお買い上げになられました
お客様。お伝えしたいことがございますので2F手芸用品店までお越しください」
最後は先ほどと逆で音階が下がってゆくピンポンパンポンで締めくくられます。
ちなみにこの赤い毛糸玉10個も本当の話ですし、「ちぃかわのお弁当箱とお箸セットをお買い上げのお客様」が呼び出されていたこともあります。
全部見られていたならなかなかの羞恥プレイです。田舎のスーパーはプライバシーなんて保護しちゃくれません。
さて先日、大学時代からの友人とご主人、私の三人でごはんを食べようということに
なりまして、久々に“大都会”に行ってまいりました。
待ち合わせ場所はとあるデパートの13階。その階で催されていた特撮映画の展示会を観に行くためだったのですが、それはそれは盛況で前売チケットの有無関わらず
入場制限が行われており、整理券をもらっても「1~2時間待ち」というアナウンスでした。
1~2時間と軽く言われましても、1時間と2時間ではずいぶん差があるもので
デパートの外に行くわけにもいかず、私たちは数階下にあるカフェで時間を潰す
ことになりました。
そうしてエスカレーターで降りている途中の階で友人が「あ!ココ寄りたい!」と
言い出してナニかと思えば大きな文具雑貨店の一角にある年賀状売り場でした。
そういえばそろそろそんな季節。すっかり忘れていました。
郵便代が高くなったので迷いましたが、それほどたくさんの人数に出すわけでもなく、
また年賀状でしか繋がっていない縁というのもありますので、私も準備しなくては
なりません。ただ、さきに絵柄が印刷されている年賀状はお値段がそれなりにするのでこの数年は見に行くこともなかったのですが、これがまた楽しい。可愛い。
来年の干支は巳です。ざっくり言えば、蛇です。それをこんなに可愛く、もしくは
カッコよく描けるのかと感心して見て回っていたら、友人とご主人が
「コレ、どお?」とニヤニヤしながら指さしています。
私もその年賀状がいたく気に入り、3枚入りデザイン違いを2種買いました。
もちろんこの年賀状は元旦に彼女たちの家に届く予定です。
細かいお金はあとのカフェで使いたかったのでクレジットで支払います。
展覧会の入口で渡された整理券はLINEで読み取れば自分の番が今どれくらいか、いよいよ近づいてきたときにはお知らせしてくれる機能まで付いていまして、私たちはそれを目安にゆっくり時間が潰せました。
展示会を観終わると夕飯にちょうどよい時間帯で、レストラン街で天ぷらを食べて
帰りました。
彼女たちとは帰る路線が違うので一人で電車を待っている間スマホを触り始めました。見ていなかったこの数時間にLINEがそこそこ来ています。
悲しいかな、全部広告。緊急の用も入ってません。
精六さんからは「お酒飲んじゃった」とゴメンマーク付きでLINEが入ってました。「迎えには行けないよ、ということだな」とそのメッセージを汲み取ります。
それから何件か読む中で「LINEニュース」というのがあって開いたら、5個ほど
並んだトピックスのなかに気になるニュースがありました。
「大型文具店等で販売の年賀状、一部印刷ミスで回収」
・・・はい、さっき寄った大型文具雑貨店はハンズです。購入したのは年賀状です。
記事を読み進めるまでもなく、最初にバーンと掲載されている記事写真は、
私がさきほど買った年賀状です。画像の一部が反転しているそうです。
このニュースの配信時間を見てみたら、まさに私が購入したであろう直後。
ハンズの店員さんも驚かれたのではないでしょうか。「いま!いま、売った!」と
ちょっと慌てさせたかもしれない。
私たちはそのあと優雅にボサノヴァが流れるカフェでお茶をして、展覧会では
特撮映画のメイキング映像を見て、天ぷら屋さんではしっとりお琴の音色なんか
流れていて、でもその中でギャル2人がまぁまぁなデカさの天丼を食べていて
それに気を取られたりしていたから、もしかしたら呼ばれていたのに聴こえなかったのかもしれない。
「(ピンポンパンポーン♪)お客様のお呼び出しを申し上げます。
さきほどハンズにてマツケンサンバの年賀状を2種お買い上げいただきました
お客様。お伝えしたいことがございますので〇階ハンズまでお越しください」
ウチの近所のスーパーだったら確実に呼ばれていたでしょう。
(ピンポンパンポーン↓)
追伸。精六さんは歩いて駅まで迎えに来てくれてました。
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