【精六さん小咄】ーまだあるぞ、一回転ー
勤務先の調剤薬局の近くにはドラッグストアがあります。
過去に一度だけ、そのお店のショッピングカートが薬局前に乗り捨て(置き捨て?)されたことが
ありました。あんなガラガラ音のうるさいカートを十数メートルとはいえ押してきた
“犯人”はウチの患者さん・・・?なんのために・・・?謎は謎のままです。
しかし、カートをそのままにはしておけません。
しかししかし、私服でカートを押して返しに行くと“私が犯人”になってしまう。
それはイヤ。自意識過剰と言われてもイヤ。
というわけで、白衣(制服)のまま「困っちゃうわ~」という雰囲気を醸し出しながらカートを押し始めました。
ガラガラガラガラ・・・
やはりアスファルトの上で転がすと結構な騒音です。転がりも悪いし、キャスターが
明後日の方向を向いてまっすぐ進まないし。
むしろよくココに放置しようと思えたな、と犯人に感心するほどですが、ほんと迷惑。
そんなイライラが私の判断能力を狂わせました。
一刻も早くカートをドラッグストアに返却したい私は、すぐそこの横断歩道ではなく
車道ショートカットを試みたのです。
斜めに渡ればドラッグストアは目前です!車の通りが途切れた今がチャンス!
いざ・・ショーーートカーーーッ・・
さきに38話をお読みになったかたには、もうわかりましたね?
そうです、またしても、そう、またしても
そこに縁石があったのです。
急いで道を横切ろうとした私の勢いはすさまじく、そんな力で縁石に前輪を激突させてつんのめったので、一回転と言うより
背負い投げでした。
前輪の力を縁石で受け止めたカートはテコの原理?(棒高跳びの原理?)で後輪を浮き上がらせ、カートの
持ち手を掴んでいた私をも浮き上がらせ、綺麗に宙を舞いました。
途切れて距離があったとはいえ、どんどん車が近づいてきます。
そのドライバーさんはさぞ恐ろしかったことでしょう。なんせ白衣の女が突然
カートを押すと見せかけて宙返りしながら車道に躍り出てきたのだから。
ドラレコがさほどメジャーではなかった時です。もし今だったら衝撃映像とか
おもしろドッキリ映像に投稿されていたかもしれません。
あっぶねー。
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