【精六さん小咄】ー言い間違え2ー

 8月8日、精六さんと地元の花火大会へ行ってきました。

毎年8日に開催されるのでお互いが休みやすい曜日に重ならないと

行けないということもあり今まで計画したこともなかったのですが

なんと今年は木曜日。私は午前だけ仕事、精六さんはその日に公休を

合わせて取ってくれました。

さらになんと。観覧席を購入したと言い出し、これにはだいぶ驚きました。

精六さんの花火デートにかける意気込みがスゴイ。スゴすぎる。


だから、その時点でなんとなく予測はついていたのです。


仕事から帰ってくると、精六さんはもう「靴履いたらオッケー」な状態で

出迎えてくれて「花火、行くぞ」と言います。

花火の開始は19時半。あと6時間半もあります。

うん、まあ、ウチの夫は、そうなるよね。


こういうイベントごとがあるときの精六さんは、ホントにホントに

「イヌ感」があります。

まず、全開の笑顔です。

ウロウロソワソワしてます。

玄関ドアを開けたら走り出すんじゃないかと思わせるほどに。

「散歩が嬉しすぎてリードをぐいんぐいん引っ張っていくイヌ」

「散歩が嬉しすぎて飼い主のほうを振り返りすぎてまっすぐ歩けないイヌ」

「水の入った器を自分で踏んづけていることに気づかず笑顔で水を欲するイヌ」

なんとなく伝わるでしょうか、精六さんの興奮具合が。

そういうところが可愛らしいと思わなくもないのですが、なにしろ「危険な暑さ」の

今夏。

日焼け止めを塗り、熱中症対策グッズをカバンに詰め、自販機は売り切れ、屋台は

行列、コンビニは大混雑が予想されるのである程度の飲み物もバッグに入れます。

「もう、だいたいでええやん」という精六さんの言葉に0.1秒ほどイラっとしながら、出発。


駅には浴衣を着た女の子3人組が、ハンディ扇風機を片手に持ちながら楽しそうにしています。足元は、厚底サンダルやスニーカー。下駄率ゼロ!

イマドキは「こうじゃないと」みたいなのは無くなってきたんですね。

鼻緒ずれが痛くて楽しい一日が台無しになるほうがイヤですもんね。

浴衣は周りの人たちを涼やかな気分にさせてくれますが、さぞ暑いでしょう。

私たちですら「こんなに早く行って(着いて)どうすんの」と思ってましたが

上には上がいるものです。


電車を一本乗り換える、その駅で。

精六さんが駅構内にある1枚のポスターの前で立ち止まりました。


「なあ、これ、知ってる?」


知ってるよ。観てないけど。


「ひかるくんへ」


ひかきみへ、ね。




花火、とてもきれいでした。

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