【精六さん小咄】ーむー
私の職業は調剤事務です。
薬局にもいろんな電話がかかってきます。
患者さんから今日のお薬の内容を再確認したくて(家に帰った途端わからなくなるんですよね)、待合室に財布忘れてませんでしたか(落とし物、忘れ物は問い合わせ電話した直後に自宅で見つかる率高し)、お薬の内容が書かれた紙と入ってる薬が違う(これ薬局として一番ダメなやつ)、
お宅でもらった薬じゃないんやけど聞きたいことがある(なぜにウチ?)、
不動産屋さんから薬剤師さんにマンション購入の営業電話(めちゃくちゃ忙しい時間帯にかけてくる間の悪さよ)、支店間の薬の譲渡依頼などなど。
そのほかにも頻度は落ちますが、常連の患者さんがセカンドオピニオンとして
他病院にかかられて、その病院から
直近で出した薬の内容をきいてくることがあります(おくすり手帳持っていくと便利ですよ)。
「昭和〇年〇月〇日生まれの〇〇〇さんがいま受診されてるんですけど
▽月△日に出されたお薬の内容を教えてください」といった具合です。
その問い合わせが医師や看護師さんからだと薬の名前を伝えてもスムーズにいくのですが
個人医院の事務の新人さんだとまだ薬品名もそんなにたくさん頭に入っていないため
例えば「リン酸コデイン散1%」と言っても「インさん・・・え?」と復唱一文字目
から間違っていたりします。そんなときはゆっくり丁寧に、こちらも滑舌を気にしながら読み上げます。
ただ、先日問い合わせてきた事務さんは何度繰り返しても正しく聞き取ってくれず、
私の発音が悪いのだとは思いますが、かなり難儀しました。
「ファロム錠200mgです」
「カロム?」
「ふぁ・ろ・む」
「タロム?」
正確に聞き取りたいという意気込みはわかるし万が一にも抗生物質でめちゃくちゃ似た名前が無いとも限らないので、こちらも正確に伝えたい。だから最後の手段「ドレミの歌方式」で伝えます。
奇しくもファロムは「ドレミファの、ファ」がスタートです。
「ドレミファの、ファ」
「はい。ファ」
「ロールケーキの、ロ」
「・・・ああ、ロ」
私は食べ物で例えることが多い。「レ」なら練乳のレです。
そして最後の一文字「む」を伝えようとして目が泳いだ。
「む・・・?」
なにも出てこない。いまなら「ムロツヨシの、ム」とか出てくるけれど
そのときは口を突いて出てくるものを言うしかなかった。
「
ある意味、心の声が漏れた受け答えでした。
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