【精六さん小咄】ー柔肌ー
以前、私が天然石(パワーストーン)にハマってしまった話を書きましたが
実はそれと同時進行で見直していたのが「風水」でした。
西に黄色(金運アップ)とか、鬼門に柊や南天を植える話などが有名でしょうか。
だいじょうぶ。最後に「ここをクリック」とかURL、貼ってません。
お勧めする内容にすらなっていません。
タイトル「柔肌」の内容にたどり着くまでお付き合いよろしくお願い致します。
職場の人間関係の多大なるこじれ、それ以前にもスーパーや駅でまったくの初対面の人から急に尋常ではない敵意を向けられるなどを幾度か経験し、私は「そういう人」なのだろうとあきらめて生きてきましたが、石にハマってからふと思い直してみたのです。
もしかして、みんな意識的に厄を回避する
お店の前に置かれている盛り塩もそうだし、プロのアスリートは部屋に
生花を飾る人が多いらしい、なんていう話も辿れば風水に行き当たります。
最近新築のおうちの前にオリーブの樹が植えられているのをよく見かけるのは
あれも厄除けとか開運とかそういういわれがあってのことでしょうか。
(地域での流行りもあるかもしれません)
親がやっていたから、先輩が実践して良い結果が出たからなど、先人の知恵として生活のなかに取り入れてる人たちだって病気にはなるだろうし、事故にも遭うだろうし、人間関係最悪な時期に突入したり失業することもあるかもしれないけれど、ナニカの厄は回避できているのかもしれない。
隣の芝生が青く見えているだけ、現状で十分幸せなのに、なにかに縋らないと平常心を保てない、そんな日々を過ごしていました。
そしてネットで風水を調べると必ず書いていることがあります。
健康運・仕事運・対人運どれをとっても「トイレ掃除を怠るな」と。
踏まえて自身を振り返ります。
トイレ掃除は普通にしているほうだと思っていましたが、見た感じ綺麗だと
サボりがちでした。トイレマットの洗濯もそんな頻繁に洗っていなかったし
トイレマットを敷いているから床も汚れてないと思って取り換えるだけでした。
が、風水さん曰く「キレイに見えていても週一はちゃんと床を拭きなさい」と
おっしゃる。
さらに情報を集めると「方位」の話に行きつき、私たちの家はメゾネットタイプの
マンションですが部屋を「一戸」とみなすとトイレの位置ががっつり鬼門のと裏鬼門の対角線上にある。そして風水さんは言うのです。「それ、アカンやつやで」と。
アカンかったらどうしたらいいのか。もう、ネット情報、鵜呑み丸々消化です。
なんと、水晶を置くと良いと書いてあるではありませんか。
石と風水。まさかこんな形で繋がるなんて。心が躍りました。
水晶ならあります。なんなら精六さんが引くほどあります。
さらに読み進めると「鬼門(通り道)にあるトイレにはトゲのある植物を置くのも良い」とあったので、サボテンの寄せ植えを買いました。
小さいアルミのパウンドケーキの型に6つ横並びで足の親指サイズのサボテン
(5種)が並んでいてとても可愛らしい。
ネット販売のお花屋さんから購入したので育て方の説明書が添えてありました。
「水のやりすぎにご注意ください」
「なるべく直射日光は避けて、あたたかいところに置いてください」
我が家のトイレには窓がなく、マンション特有の断熱性もあり、トイレといえど
寒くなることはなさそうです。水をそんなにあげなくても良いのもラクちんで助かります。
鬼をやっつけるには少々可愛らしすぎますが、そのチクチクした胴体がなんとも頼もしい。
こうして我が家のトイレには無印良品で買ってきたブックスタンドをひっくり返して
台にしたところへ水晶のポイント(六角柱)とクラスター(集合体)、その横に
サボテンロクレンジャーが飾られました。
飾った翌日、精六さんはどうやらサボテンの真贋を見極めるべくトゲに触ったらしく、トイレから出てきて「本物やん」と言いながら、指の先を気にしていました。
ちょっと痛かったのだと思います。
たまーに数滴ずつの水やりをしつつ、トイレに飾って半年が過ぎた頃でしょうか。
サボテンが成長していることに気づきました。
生き物を迎えた時点で一番言ってはいけない台詞の上位にくるであろう
「大きくなると思ってなかった」を、ほんの数秒心の中でつぶやいてしまいました。
そして次の瞬間には「そりゃそうだよな、生きてるんだもん」と思い直し
そこから毎日サボテンの変化を見守ることにしました。
寒の戻りもなく、春めいた日差しが続くようになった3月も終わりの日曜日。
洗濯を干そうとベランダに出ると風も温かく、日差しも柔らかく気持ちよかったので
洗濯機がまわっている間だけサボテンを日光浴させようと思い立ちました。
ベランダに設置された室外機の上に置くとこれまた画になって可愛らしい。
私は洗濯終了のアラームを待って、スマホで遊んでいました。
洗濯終了を知らせるアラームが鳴ってから5分も経っていなかったと思います。
カゴに移し替えて階段をあがる。窓を開ける。ベランダに行く。室外機を見る。
「・・・・・・は?」
アルミのケーキの型に入った6個横並びの可愛い可愛いサボテンたち、
だったのです、さっきまで。
内ひとりが、あきらかに顔色が悪くなっているのです。
さきほどまでグリーンキウイの中身のような、ツヤツヤしたキミドリ色だったのが、いま目の前にいるのはものすごく顔色が優れないシュレックのようです。
さらに少し瘦せてシワも寄っている、気がする。
慌てふためく私。ほかの5体に特に変化はない・・・
いや、よく見たら種類の違うもう1体はこんなにトゲが赤くなかった気がする・・・?
この40分に何があったんだ。
ナニガアッタもナニも、日光浴のせいなのは明らかです。
この顔色の悪さがワルイモノとは限らない、という一縷の望みをかけてググります。
検索キーワードを変えて何度も何度も検索する。
そうしてたどり着いた答えが
「日焼け」。
ひやけ、て。
たしかに直射日光、当てましたよ。
でも、サボテンですよ。ドンタコスの国でにょきにょき生えてるアレ、仲間ですよね。なんなら太陽ガンガンに浴びて、焼いた餅みたいにいびつに成長してくれていた
ほうがなんぼか納得できたのに、40分で日焼けでやせ細るとは。
・・・逆ギレしてごめんなさい。
そんな柔肌だとは想像すらできなかった私が全部悪かったです。
その後、日陰にて休ませ、少し水を与えたりもしたけれど日に日にやせ細ってゆき、
逝かせてしまいました。
また、トゲが赤くなった子もその後トゲが伸びるスピードが増し、ふさふさになったので元気いっぱいなのかと思っていたら、今度は水をやりすぎていて根腐れを起こして枯れさせてしまいました。
残る4体を土から抜いてケースの中で等間隔に並べ直しました。
そのうち同種が2体。この品種が環境の変化にも強いようで、まだ成長を見せています。またそれぞれにテリトリーが拡大されたことで、別の1種はトゲだけが伸びてきました。
最近は日曜日だけ摺り硝子越しに1時間ほどの日光浴をさせています。
風水の効果はともかく、元気に生きていてほしい。
風水の効果はともかく、と思えるまで心持ちが回復したのは
風水と石のおかげ、なのです。私にとっては。
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