【精六さん小咄】ー新人さんー
この4月に入社した新人さんを教育しています。私と同じ「調剤事務」です。
彼女の前職が医療事務だったからでしょうか、上達スピードがとても早い。
24歳。のびしろしかありません。やる気もあります。記憶力も良いときている。
ありがたいなぁ、こんな良い人材が入ることもあるんだなぁ、
しみじみ幸せを感じてはいるのですが、ただひとつ、そう、本当にひとつだけ
気になっていることがあるのです。
それは彼女の「返事のクセ」です。
彼女が入社して一日目から「?」と感じていたのですが・・・
初めて教えることでも「あぁ~」と返事するのです。
「あぁ」のニュアンス、文字にするとわかりづらいですね。
例えていうなら「あぁ~~、それね~」とか「あぁ~~、忘れてたわ~ごめん
ごめ~ん」の「あぁ」です。
つまり「うっかりしちゃってました」という軽い謝罪を含む「あぁ」とでも言い
ましょうか。
具体的な会話は忘れてしまいましたが
外を掃く用の箒はココにあるからね→「あぁ~」
その薬、処方箋はトーワで来てるけどウチはファイザーだから変換して→「あぁ~」
休憩入るときは奥の薬剤脚さんにも「休憩いただきます」と一応声をかけて
→「あぁ~そうですよね~」
・・・・・それ「はい」で、良くね?
と思ってしまうのは、私が昭和女だからですか。
彼女の名誉のために追記しますが、もちろん「はい」のお返事もいただきます。
なんでも「あぁ」と言ってくるわけではありません。
ただ、この3週間でその「あぁ」を幾度となく聞いていると、ある種の法則が見えて
きました。
彼女はこの職場の環境に早く馴染みたいがゆえに初日から「ここの人ぶっている」のではないか、と。
「あなたはまだ何もわからないだろうから」と蚊帳の外に置かれるのがイヤなのでは
ないか、と。
オトナの会話に「それ知ってる!」と突如参加してくる子どもを髣髴とさせるのです。
あとは彼女の「叱られ回避策」かなとも思っています。
今で3週間、コチラも確実に教えたと自信のあることは間違いに気づくまで見守って
放置することもあります。それでもミスに気付かず最終段階の印刷に進もうとしたときに「違うよ~?」と声をかける。そしてどこが違うかを指摘すると「あぁ~」と言う。「わかってたのに、やっちゃいました~」のニュアンスで。
そうなるとこちらも「うっかりならしょうがないね」と応じるしかありません。
しかし入社して3週間、返事はやはり「はい」、ミスしたら「すみません」で良いと
私は思うのです。
でも何年か前に「すみません」しか言わない子を教育したこともあって、一年間
いろいろ教えても毎回「いま初めて聞きました」みたいな反応なので
メモを取ることを教えたけれどそのメモを見ない、メモした場所がわからない、
そのたびに「すみません」と謝って正解を教えてもらってその場は丸く収まって
また覚えない・・・そんな繰り返しだったから「すみません」も使い過ぎには
注意が必要です。
気になるとはいえ、とても些細なことなので彼女を育てていくうちにいずれ
「本物の、あぁ」になる日が来ることでしょう。
私が定年を迎える頃、彼女は36歳。それまで続けてくれるかはわかりませんが
私の大事な後継者。大事に育てようと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます