【精六さん小咄】ー美容院での過ごし方ー
私は美容院がとっても苦手です。
(ブログ漫画や、コラムでもときどき見かけるお題ですが)
まず、シャンプー台が苦手です。
腰をかけて「じゃ、倒しますね~~」と椅子を倒されると流し台の淵に
首が引っ掛かる、はずが、どうにもうまく収まらない。
倒された後でウニウニと腰をくねらせながら、上へずりあがっていく作業が
必要で、自分が胴長短足だと思い知らされる拷問椅子のようです。
位置が決まると次に、顔にタオルをかぶせてもらいます。いや、顔の中央Iラインと
言いましょうか。私が最近行っているお店は、これまで経験した美容院のどこよりも
狭小サイズで、もはや、鼻とデコと口しか隠れていません。
なんなら口の端っこらへんも隠れておらず、「首、苦しくないですか?」「お湯加減
いかがですか?」と聞かれてなにか返事をすると、その布っきれを食べてしまい
そうになる。あのタオルは一体、ナニモクテキで掛けられるのか。
顔にまるっと掛けるとご遺体っぽいからダメなんでしょうか。
でも、倒れた椅子に寝ころび、顔中央に細長い白い布を置かれた私は
お札を貼られたキョンシーのような状態なわけで、遺体どころか、ゾンビです。
目と頬が丸出しの状態で己の顔のデカさを思い知らされ、目を開けることもできず、私はナニからナニを守られているのか。わからないまま現在に至ります。
ようやくシャンプーも終わり、カットしてもらう椅子に促され、ケープを掛けら
れます。あれも苦手です。手を通すべきか、通さざるべきか迷います。
通すと、切った髪の毛が手にかかります。
通さないと、鼻がかゆくなった時にスグ掻けません。
私はパーマもしないし、毛染めもしないので、何かを待っている間に雑誌を読むとかもしないので、手を通さない派です。鼻がかゆくなったら気合で乗り切ります。
てるてる坊主スタイルになったら、お次は肩を揉まれます。
あれが一番苦手です。苦手なら苦手だと伝えれば良いだけの話なのですが、切る前に
肩やら頭皮をほぐすというのはナニか理由があってのことなのだろうと思うと
無下に断れないのです。決して私は気持ち良くないのですが(むしろガチガチに緊張する)私の感覚や気持ちとは裏腹に頭皮は柔らかくなり、髪は艶が増すのかも
しれない。だったら料金分やってもらおうじゃないか、というせせこましい考えが
浮かんでしまうのです。
最後に、合わせた手のひらの中に空気を包むようにした裏ゲンコツで頭をポコン
ポコンと叩かれ、両肩一回ずつポコンポコンと叩かれて終わるのも、だいたいどの店でも同じなのですが、アレもナニ。血行促進、かなぁとは想像していますが、
謎です。
さあ、いよいよ髪を切ってもらいます。
みなさんは、髪を切ってもらっている間、どこを見ていますか?
目をばっちり開けて、切っていただいている美容師さんと楽しくお話される方も
いらっしゃるでしょう。こっちは話したくない気分のときにでも容赦なく喋って
くる美容師さんもいるはずです。
私は、終始、目を瞑っています。
目の前の鏡には、てるてるスタイルの自分。
その背後には、美容師さん。私を担当してくれるのは20代半ばの男性です。
通い始めたのがコロナ禍初期だったこともあり、彼とは最初から会話はありません
でした。
この美容院に行くきっかけになったのは、それまで行っていた実家近くの美容院が
閉店になったからで、職場に近いのも決め手でした。
前髪、後ろ髪をどれくらいの長さまで切ってほしいか伝えたら、私は仏像になります。ゾンビやら仏像やら、本人としてはとても忙しいのです。
会話はほとんどないのですが、この担当の彼、たまに“ひっかかる”言葉を使います。
たとえば「最後に毛染めされたのはいつですか?」と訊いてきたので
「私、ちらほら白髪はあるけど、まだ染めてないんですよ」と答えると
「うちの母も二か月に一回くらいですよ」と言う。
・・・聞いてた?私の話。
また別の日には「前髪、サイドどうされますか?」と訊いてきたので
「普段、後ろにくくることが多いんですよね~(どうしたらいいですかね)」
というニュアンスで返事をしたら
「顔が大きいのが気になるようなら、サイドはちょっと残されたほうがいいと
思いますよ」とおっしゃる。
え、なに。顔、大きいの、わたし。
言葉のチョイスの問題なんでしょうが、たまにグッサグサくることがあります。
実は二度ほど浮気してほかのお店に行ったのですが、二か月“もつ”のがいまのところココのお店だけなんです。
不思議なもので、ヨソに行くと一か月後には伸び方の変な髪が登場する。
気のせいかもしれませんが、前髪も伸び方がおかしい、気がする。
水に濡らしても、ドライヤー当ててもキまらない。
私はできることなら美容院に行く回数を減らしたいので、前髪も相当短めに切って
もらいますし、最初のオーダーも「2か月来なくていいくらい」と言っています。
イヤな客だと思われてるかもしれません。でも、私にとっては“腕は確か”で
非常に助かっています。
が、美容院、苦手です。
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