【精六さん小咄】ー言い間違えー

 【精六さん小咄こばなし】は、普段の精六さんとのやりとりや、友人と出かけた話などを少しだけ書く、エッセイ『精六さん』の休憩所のような場所ページです。



 精六さんは、よく「言い間違え」をします。

その言い間違え方が、いつも微妙に“惜しい”のです。

つい最近、なんなら今朝誕生したものもあるのでいくつかご紹介しますと。


 私は毎朝、精六さんのお弁当を作ります。

ミッフィー柄のお弁当箱で、左がごはん、右がおかず。右半分の上半分は卵焼きと決めています。

すべてを詰め終えて、最後に白ごはんの上にトッピングをします。

のりたま、味道楽、わかめふりかけ、ごま塩、梅干しだけの日もあります。

今日は「ゆかり」です。私が好きなので、常にストックしてあります。

それを今まさにふりかけんとするところに、歯磨きを済ませた精六さんが私の背後を通り過ぎながら言いました。



「お!ユーカリ多めにしてな!」



コアラか。



 ある日、二人で信号待ちをしていると或るカップルが隣に並びました。

頬は硬そうな髭で覆われ、ボタンをなかばまではずしたシャツからはあふれんばかりの胸毛、たくましい二の腕…アニメ『ポパイ』に出てくるブルートを連想させるマッチョな外国人男性が、色白で線の細い、韓流ドラマで主役を張れそうな長身美人さんの腰に手を回して耳元でなにか囁いています。

私なら耳にあんなにピッタリと髭ボーボーの口をつけて囁かれたらこそばくて笑ってしまいそうですが、彼女は前を見据えてニコリともしません。さすがです。美人たるもの、そうでなくてはいけません。

信号が変わりました。人波に流されて私たちとカップルの間には距離ができました。

精六さんは私にそっと囁きます。



ああいうのを

美女びじょ魔獣まじゅうって言うんかな。



魔法をかけられて野獣になった王子様、略して、マジュウ。

一字違い 急に漂う B級感。

思わず一句読んでしまいました。


 そのほかにも、故・ダイアナ妃生前の再現ドラマを観ていて、彼女の夫が浮気していたと噂されたお方を、



キメラ夫人



またある時は、ミニオンズをミリオンズと呼んだりもしてましたっけ。


 スマホでユニクロのネット広告を見ながら



「今度ジャガーパンツ買おうかな」



正解はジョガーパンツ。一文字違うだけで豹柄パンツが浮かぶ、この不思議。


 明日から一泊二日で叔母のお墓参りも兼ねて、私の母と私たち夫婦の三人で東京に行くのですが、予約したホテルの注意事項に「スマートカジュアル」というドレスコードが記載されており、

カジュアルとフォーマルの間のような、おめかし服を持ってない精六さんが


今日ちょっと服、見てくるわ


と言うので、出かけたついでにクレジットカードが引き落とされる口座にこれだけ入金しといて、と数万円渡してお願いしました。

すると、ニヤリと笑って冗談ぽく一言。



アルマニーニとか

買って帰ってもビックリせんとってやー?(笑)



パチもんやん。間違いなくビックリするわ。でも、ちょっと見てみたいぞ、アルマニーニ。

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