第13話 道なき道をゆく

 みち、と読んではいけない。どう、である。


茶道、華道、書道、剣道、柔道、弓道、合気道。きっと他にもあるだろう。

神道、仏道も“その、どう”に含めてよいのかわからないので今回は外しておく。

イメージとしてはそれぞれの道に「師範せんせい」と呼ばれる方がいて、決してはみだしてはいけないルール(型)があって、武道には勝ち負けがある、そんなとこだろうか。あと、ソレに対峙するときは己れ独りというのも特徴かもしれない。

剣道ダブルスとか、フリースタイル茶道など聞いたことがない。

私が知らないだけだったら申し訳ないが。


母は私をなにかしらの「どうみち」に進ませたがって、小さい頃には茶道、華道の「体験」をさせられた。が、どちらも興味を示さなかった。

書道には数年通ったが、小学三年あたりから母が断続的に入院したこともあって、

とある月の月謝を納めに行ったついでに一人で決めて辞めてきた。

書のなんたるかなど学ぶことも気づくことも無いまま辞めたから、はただの言い訳に

過ぎないが私の書く文字は未だに汚文字悪筆だ。


あとは学生時代に友人が弓道部を創設するにあたり必要な部員の頭数として入部

したことはあったが、まるまる幽霊部員として活動を終えた。


そう思うとどうにまったく縁遠い人生でもなかったのだが、そもそも私は

「習い事」が非常に苦手だ。

苦手意識を決定づけたのは、幼稚園くらいの時に週二で通っていたピアノである。

先生からは毎回「なぜ、教えてるように出来ないのか」と叱られ、幼心にも

「できるようになるために習いに来てるはずなのに、なぜ叱られねばならぬのか」

と泣いて帰るばかりであった。家での練習の仕方もわからなかった。

おとなたちにわからないことをわかってもらえなくてわんわん泣くしかなかった。

(数年経ってから母に聞いた話では、あまりの私の出来なさっぷりに「おたくのお子

さんはピアノに向いてないから教室を辞めてほしい」と先生から打診があって辞めさせたらしい。自分の教室にそんなスーパー劣等生が在籍しているのが許せなかったのだろう。これからのご近所付き合いもあるというのに「おたくのお嬢さん(私)は

右脳だか左脳が全く機能していない」と嫌悪感丸出しで言いきられたらしいので

“よっぽど”だ。母もさぞ悔し恥ずかしい思いをしただろうが、自分ではそこまでとは

思ってなかったから時差でショックを受けたものである。)


ピアノは“どう”ではないが、幼少期に打ちのめされた私の向上心や自尊心には

生々しい古傷が残り、誰かに師事することに恐怖を抱くようになってしまった。


だからこそ、憧れてもいる。


「よいせんせい」に出逢いさえすれば、伸び代しかないのだ。

水泳、陸上競技、球技、はたまた絵画や楽器演奏などは持って生まれた身体能力や

センスが問われるが、どうは志しがあれば平等に受け入れてくれそうな懐の

深さを感じる。たぶん。


けれども、私はこれからも道なき道をゆく。


みち、と読んではいけない。

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