2023年6月 滋賀、スピッツライブ@大津

 私はスピッツが大好きだ。スピッツを知ったきっかけは、映画「三月のライオン」の主題歌に「春の歌」のカバーバージョンが使われていたことだった。その歌を私はとても気に入り、その歌が何であるかを両親に聞いた。そこで初めてスピッツというバンドの存在と、そのベストアルバムが実家にあることを知る。そこから後はもう凄い、スピッツの「CYCLE HIT 1991-1997」と「CYCLE HIT 1997-2005」をCDが擦り切れるくらいに聞き倒した。「ロビンソン」や「チェリー」などの王道はもちろん「猫になりたい」とか「ヒビスクス」といった曲から「花鳥風月」、「醒めない」といったアルバムへと触手を伸ばし、どんどん沼にハマっていった。だけど、ライブには一度も言ったことがなかった。

 4月ごろだったか、スピッツが全国をツアーで回るという情報を仕入れた私は、大津でのライブのチケットの抽選に応募した。それに見事当選し、つい先日行ってきた。今日は少しだけ、その時の話をしようと思う。

 その列車に私は、京都市営地下鉄東西線の西大路御池にしおおじおいけ駅から乗った。その列車がすごい列車だということをつゆほども思わずに。とにかくすごかったのだ。その列車は浜大津はまおおつ行きで、途中の御陵みささぎまでは地下鉄線だ。そこから先は京阪京津けいしん線を走って行く。ここからがすごかった。なんと京阪山科やましなのあたりから地上に出たと思ったら、ぐいぐい坂を登っていくのだ。カーブもすごくて、窓から2両先が見えるほどだった。キシンキシンと悲鳴をたてて山を登っていく。”曲がってー♪登ってー♪逢坂おうさか山を越えてー”(「さわって・変わって」風に)まるで箱根登山鉄道のようだった。地下鉄時代からの変わりように処理が追い付かない。この列車は上栄町かみさかえまちを過ぎると一転、路面電車になった。

 浜大津で石山坂本いしやまさかもと線に乗り換えて石場まで乗った。小さな電停で降りたら、ライブ会場はすぐそこ。歩いて会場へ向かい、テラスから琵琶湖を眺めた。湖岸の木々と夕暮れの赤い光が魔法のような景色を作り出していて、大津市民をうらやましく思った。グッズを買って、会場に入る。ライブが始まるまでの間はずっと緊張していた。やがて暗くなり、舞台がパンクな光で輝き、さらに輝くスピッツが入場してきて、スピッツのロッカー魂は爆発した。

 頭が破裂しそうな夜だった。その夜は興奮が冷めず、眠れなかった。まさに「さめない」夜だった。これで朝も「醒めな」ければ完璧だったが、あいにく次の日は一限から授業。眠い頭で一日過ごし、寝る前にふと新曲のアルバムを聴いてみたのだった。

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