ひとりで居残り。ダメ。絶対。

龍羽

ひとりで居残り。ダメ。絶対。




 学生時代のお話。


 季節は忘れてしまったが、研究室に最後まで残って作業していた日のことだ。



 突然だが自分は、自分で言うのもアレだが抜けている性質タチである。


 何度も見返した文章に誤字があったり。

 部活で描いた漫画原稿の台詞を修正液で消したきりにしたり。

 大事なものを持って行った移動教室で筆記用具は持ってたのに財布を忘れたり。


 わりと可笑しな抜け具合である。



 そんな感じなのでこの件の前に最後まで残って作業した日に、うっかり戸締り手順の一つが抜けていたことがあった。

 そんな指摘をされたばかりだったから、『今度こそ』とあまり遅くならないうちに(最後まで一人残っている時点で遅いのだが)帰り支度を始めたのだった。


 自分の出した道具類を一通り片付け終わったあとのこと———



 とん とん


 と、けっこう強く肩を叩かれた。



「はーい・・・?」


 だれもいなかった。


 心臓が跳ねた。

 背筋が凍った。


 本当に怖いと人は 叫んだりしない。まじで。



 急いで帰り支度をし、急いで鍵をかけて研究室を後にした。

 ほとんど片付けを済ませた後だったのが幸いした。



 実はこの研究室は、校内にいくつかある心霊スポットの一つだったとか。なんとか。



 後日、あの日しっかり戸締りができていた事は確認したが。

 もう二度と最後まで居残りしないと誓った。



 ひとりで居残り。ダメ。絶対。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとりで居残り。ダメ。絶対。 龍羽 @tatsuba

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ