失われたSFをもとめて
サイエンスフィクションないしスペキュレイティブフィクション。
SFの正式名称です。訳すると科学小説または思弁的小説となります。
なんか難しそうですよね。でも、そんなに難しくはありません。科学っぽいものが出てきて、それによって何かが起きる。乱暴に言ってしまえばこんな感じ。科学っぽいものというのが大切で、これがないとSFにはなりません。
じゃあ、科学っぽいものってなんだよって話になると思います。宇宙人、タイムマシン、銀河帝国、人工生物、AI……パッと思いつくのはこれくらい。他にもたくさんのものがあります。
逆に、SFっぽくないのってなんでしょう。ゾンビとかはどうでしょう。今ではホラー寄りとなってしまいましたが『バイオハザード』を見るとウイルスが原因となっています。ということはSFといえます。
また、魔法少女ものはどうか。魔法なんだからSFちゃうやろ、という文句が聞こえてきます。そうです、厳密に言えばSFではありません。ですがSF作家アーサー・C・クラークはこう言いました。『高度に発達した科学技術は魔法と見分けられない』と。
そういう意味では科学も魔法も一緒です。違いは、現実世界の原理法則に則っているかいないか、現実の延長線上にあるかないか、だと思っています。マッチを擦って火を起こすとき、たくさんの物理現象が関係します。摩擦とか熱量とか、化学反応とか。ですが、魔法なら、現実には存在しない原則、魔法的現象が関係するのです。
この辺は掘り下げると、結構面白いのですが、今回のタイトルは『失われたSFをもとめて』です。そっちに話を戻します。
上で挙げたものは言うなれば、舞台装置です。道具です。宇宙人もタイムマシンも銀河帝国も人工生物もAIもゾンビも魔法少女も。
ではSFとはなんでしょう。ジャンルでしょうか。恋愛小説、ホラー小説、ミステリ小説、そしてSF小説。SF小説を成しているのは、宇宙人とか未来人とか超能力者とか地底人をはじめとするSFっぽいもの。
ですが。SF以外であっても、そういった要素を入れたものは数多あります。先ほど例として挙げた『バイオハザード』にパンデミックものですが、だからといってSFゲーということは少ない。どちらといえばホラーゲームと呼ばれます。もちろん、ホラー要素が強いから、というのはあるかもしれません。宇宙を舞台にした『デッドスペース』はSFホラーと呼ばれますから。
つまり、作品にはSF濃度のようなものがあるのかもしません。これがある一定の量を超すと、その作品はSFと呼ばれるようになる。「ちっSF濃度3かゴミめ……」みたいな。
そう考えると、SFは失われたわけではない。むしろ、その逆なのではないか。もっといえば、SFはありとあらゆるものの中に含まれてしまったのではないか。あまりにも多くの人の間に広まってしまったから、意識されなくなってしまったのではないでしょうか。
これを失われたとか忘れ去られたと形容することもできるとは思いますが、案外逆だったりして……なんてわたしは思うのです。
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