1-8.青先輩:DocumentaRy

 私はね、中学の頃『人間なんてどいつもこいつもクソだ』って思ってた時期がありまして。

 まあ厨二病ってやつだよね。なかなか痛いでしょ?


 で、そういう時期に起こったことなんだけど。


 ちょっと矛盾してるんだけど、私には仲の良い友達がいて、仮にAさんって呼ぶけど、そのAさんから急に無視されるようになったの。

 いくら理由を訊いても答えてくれなくて、途方に暮れていたんだけど、別の人から『Aさんの好きな男子が、アオイちゃんのことが好きって話しているのを偶然聞いてしまったから』っていう理由を聞いたの。


 まあ、よくある嫉妬だよね。自分で言うのもなんだけど。

 だからと言って、Aさんとこんなことでケンカしたくなかったから、色々と頑張ってAさんと話し合おうとしたんだけど、結局ダメで。


 転機だったのは、私のことを好きな男子……Bくんが、『放課後屋上に来て欲しい、話したいことがある』って言ってきて。

 色々と察したから、私はAさんに『放課後Bくんと屋上で話すから、Aさんは隠れて聞いてて』って伝えておいた。


 それで、実際屋上に行って、Bくんに告白されたの。


 当然、断ったんだけど。


 私は、Bくんが私に二度と関わらないように、かなり酷い言い方をしたの。『あなたに全く興味が無い』とか『今後も絶対、友達にもなり得ないから話しかけてこないで欲しい』とか、色々と。


 私とAさんの問題は、Bくんには全く関係の無いことだったのに、私はBくんを意図して傷つけるようなことを言った。

 それでもBくんは、私に『ごめん、来てくれてありがとう』ってだけ言って、立ち去った。


 残った私が、隠れていたAさんに『これでいい?』って訊いたら、Aさんは私に泣いて謝ってきて。

 だけど私は、もうどうでも良くなってて、そのままAさんを残して帰ったの。


 その後どうなったかって言うとね。

 私とAさんは卒業まで……卒業後もだけど、一切話さなくなった。

 Bくんも、私に関わることは無かった。

 AさんとBくんが、付き合うことにもならなかった。


 ……まあ、よくある誰も幸せにならない話だよ。


 本当ならきっと、もっと良いやり方があったはず。私がちゃんと考えておけば、私とAさんは仲直りできて、なんなら私がAさんとBくんの仲を取り持つ、なんてこともできたかもしれない。

 だけどしなかった。よりにもよってというか、一番最悪な手段を選んだ。


 多分ね。

 私はAさんを、どこかのタイミングで、”仲の良い友達”から”クソな人間"に格下げしたんだと思う。

 何の関係も無いBくんを傷つけた自分を差し置いてね。


 これで分かったと思うけど、私は出来た人間じゃない。


 レンくんと私は普通の人だー、って偉そうに言っちゃったけど、本当は、私は”クソな人間”なの。

 誰かを平気で見下して、誰かを平気で傷付けて、そのまま何もせず放置するような、そんな”クソな人間”。


 レンくんは勘違いしているけど、助けられているのは私。

 私は一人じゃ何もできない。私がこうして生きていられるのは、レンくんが一緒にいてくれるからなんだよ。


 レンくんは考えすぎる。優しすぎる。善い人すぎる。だから、打算的なことを考えると過剰に自分を責めてしまう。

 私を見て欲しい。自分のクソさを棚に上げて、レンくんに縋ってのうのうと生きようとしている私を。


 もちろん私は、そんな自分が大嫌い。


 私はレンくんに、憧れているの。

 レンくんのような人になりたい。レンくんのように、誰かの為に頑張れる人になりたい。

 だから私は、レンくんを助ける為に頑張ってる。

 でも、これってつまり、自分の為に、ってことでしょ?


 レンくんも、自分の為に私を助けて良いんだよ。

 ”憧れの私”に気に入られる為に、なんて当たり前じゃん。私だって、”憧れの君”に気に入られたいもの。こんな時に、だなんて考えることじゃない。形なんて、どうでもいい。

 お互いに、こうなりたいって目標に向かって頑張ってるだけ。それで結果的に生きていられれば、それで良いじゃん。善い人である必要は無いって、私は思うよ。


 色々語っちゃったけどさ。

 私が言いたいのは、一つだけ。

 レンくん。私をいつも助けてくれて、本当にありがとうね。

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