作戦会議と突入 1

 ドウェインさんの推理通り、ブレーメの町の女王陛下が魔力を狙ってグレアム様と、こっ、子供を作ろうと考えているのならば、のんびりしているわけにはいきません。


 ……グレアム様の貞操、そしてわたくしの離婚の危機ですからね‼


 ロックさんがクウィスロフト国に応援要請に行きましたけれど、戻ってくるまで待っているなんてわたくしには無理でした。


「ドウェインさんは水の魔術もお得意ですよね?」

「もちろんです姫。私に使えない魔術はありませんよ」


 ……使えない魔術がないと言うのは少々怪しいですが、それほど多くの魔術が使えると言いたいのでしょうね。そこは疑ってはいません。


 つまり、ドウェインさんがいれば、海底にあるブレーメの町にも向かえると言うことではないでしょうか?

 わたくしはちらりとガイ様を見ます。

 ガイ様は眉を寄せて考え込んでいましたが、じーっとみつめつづけますと折れてくださいました。


「まあ、ドウェインが一緒なら、何かが起こっても逃げられるから大丈夫か」

「では!」

「我は止めない。あとはメロディたちに訊け」


 ガイ様からお墨付きが出ましたよ!


「メロディ、マーシア、いいですよね⁉ わたくし、グレアム様を助けに行きたいです‼」

「…………ダメとは言えないよね、お母さん」

「そうねぇ……」


 いいと言われるまで食い下がる気満々だと気づいたのか、メロディもマーシアもわたくしを見て苦笑します。


「本当はお止めしたいんですが……、一服盛られた旦那様がほかの女との間に子供を作ってしまった後だとまずいですからね」

「い、い、一服……?」


 メロディ、そんな恐ろしい単語はドウェインさんのお話には出ていなかった気がしますよ。

 ぞっとしてマーシアを見ましたが、マーシアも否定しません。


 ……なんということでしょう⁉ こうしてはいられません。グレアム様が変なお薬を飲まされる前に助け出さなくては‼


「そこまで重要視することですかね? 離婚問題はともかくとして、魔力が多い子供はいるにこしたことはないじゃないですか。他の女性との間に子供が生まれることがそんなに問題ですか?」


 大問題に決まっているではないですか‼ 一般常識の通用しないドウェインさんは黙っていてください!

 メロディがぱきぽきと指を鳴らしたのを見て、ドウェインさんがさっと自分の周りに結界を張りました。怒られるのが嫌なら怒られることを言わなければいいのですよドウェインさん。


「そうと決まればいつ向かうかですが……、ガイ様、どうすればいいでしょう?」

「夜にしておけ。アレクシアもドウェインも我の血を引いているからな、昼間はさすがに警戒される。闇の魔術を使えば、暗闇でも昼間と同じだけの視界が保てるはずだ。ドウェイン、使えるだろう?」

「もちろんですよ。では夜に突入するとして、今のうちに……」


 はい、準備ですね!

 敵地(?)に乗り込むには入念な準備が必要ですから!


 わたくしが何を準備すればいいかとドウェインさんに視線を向けますと、ドウェインさんは真面目な顔でこう言いました。


「キノコを採りに行ってきます」


 ……メロディではありませんが、わたくし今、無性にドウェインさんを殴りたいです。




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