竜の秘密 3
サンドイッチを四つほど食べて、ガイ様はお眠りになりました。
人の姿のままの方が楽なようで、子供の姿のままこっくりこっくりと船をこぎはじめたので、ベッドにお運びしたところ、そのまますーっとお眠りになったのです。
ジョエル君たちも家に帰って休むとおっしゃったので、わたくしとグレアム様も休む準備をはじめます。
メロディも疲れたと思いますから、お風呂の準備はわたくしがすると言って、メロディには先に休んでいただくことにしました。
魔術を使えば、お風呂の用意も簡単なのですよ。水と火の魔術が使えればお湯も沸かせますからね!
「アレクシア、お前もまだ風呂に入っていないんだろう? ついでだ、一緒に入ろう」
「はい、一緒……一緒⁉」
お風呂の湯加減を見ておりますと、着替えを運んできたグレアム様がさらりと爆弾発言を落としましたよ。
……一緒って一緒ってことですよね一緒にはほかに意味はありませんものね⁉
結婚式を終えて、わたくしはグレアム様と夜を共にしておりますが、お風呂は一緒に入ったことはありません。
……大変です。大変ですよアレクシア! 一緒にお風呂です。どうしましょう? なんだか一緒のベッドに入るよりドキドキしますよ⁉
あわあわしているうちに、グレアム様がわたくしの夜着まで運んできてしまいました。
「湯加減はちょうどよさそうだな」
バスタブに手を入れて、グレアム様が湯の温度を確認します。
……あのっ、グレアム様はどうしてそう冷静なのですか⁉ わたくし、心臓がおかしくなりそうなほどドキドキしているんですがっ。
バスルームで一人硬直している間に、グレアム様は脱衣所で服を脱ぎはじめました。
……グ、グレアム様、潔すぎませんか? どうしてさくさく服を脱いでいるのですか? わたくしに、覚悟を決めるお時間をくださいっ。
きっと、そう、そうです。夜も遅いので、グレアム様は時間短縮のために一緒に入ろうとお誘いくださったのです。他意はないはずですので、わたくしがドキドキしておろおろするのはおかしいのです。大丈夫、冷静に……。一緒にお風呂ははじめてですが、ただ服を着ていないだけです。何を狼狽える必要があるのでしょう。いつもと同じ同じ同じ同じ同じ……やっぱり同じではありません!
わたくし、今すぐ回れ右をして逃げ出したくなりました。
一緒にお風呂はわたくしにはまだ覚悟が持てません。
恥ずかしすぎて、明るく照らされたバスルームでグレアム様の裸を直視できな――って、きゃああああああ‼
「アレクシア、服を脱がないと風呂に入れないぞ」
いつの間にか全裸(全裸!)になったグレアム様がわたくしの前に立っておりました。
顔から火が出そうなほど熱くなっているわたくしを見て、くつくつと楽しそうに笑います。
もしかしなくてもわたくし、揶揄われているのでしょうか? なんだかとても楽しそうなお顔をしていますよグレアム様っ。
いくらわたくしでも、こんな意地悪をされたらちょっと拗ねてしまいますよ。
むむっと口をとがらせていると、笑いながらグレアム様がわたくしの尖らせた口にちゅっと口づけを落としました。
「ほら、早く」
うぅ、耳元で甘い声で囁かないでくださいませ。
……わたくしは、壊れそうな心臓を抱えて、グレアム様に屈服しました。
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