祭壇の調査と炎のキノコ 1

 祭壇の謎が深まったおかげで、中にあった火の魔石をもらう相談を持ち掛ける暇はありませんでした。

 でもグレアム様のことですから、あきらめてはいないと思いますけどね。折を見て、ジョエル君に相談しそうな気がします。


 ドウェインさんは今日からケントさんとともに火竜の一族の書物の中から、祭壇の奥の空洞について書かれているものを探すため、ケントさんが使っているお家に泊まることになりました。


 夕食を終えたわたくしは、寝室でグレアム様の晩酌にお付き合いしています。

 ベノルトさんからスパイスを漬け込んだお酒を頂いたのですよ。度数が高いのでわたくしはご遠慮しましたが、グレアム様は味が気に入ったようです。


 窓際のソファに並んで座って、わたくしはお酒の代わりに蜂蜜入りのホットミルクを頂いています。

 おつまみは、ドライフルーツ入りのチーズです。ちょっぴりお酒の香りのする大人の味のチーズでございます。美味しですが、香りで酔ってしまいそうなので、わたくしは控えめにしておきます。


 窓の外には、キラキラと宝石のようにお星さまが輝いていました。

 今日は星も月もよく見えます。星がこう、銀色の帯のようにまとまっているのが見えます。とってもきれいです。

 星の眺めながらグレアム様と過ごす夜は、時間がとってもゆっくり流れていく気がします。

 お酒を飲んでいるわけではないのに、心がふわふわしますし。肩に回されたグレアム様の腕が、お酒を飲まれているからなのか少し熱くて、それがまたぽかぽかして気持ちよかったりします。


「アレクシア」

「はい……ん」


 返事をすると、口の中にチーズが押し込まれました。

 ドライフルーツ入りのチーズは甘くておいしいです。お酒の香りが、鼻からふわーっと抜けていきます。


 チーズを咀嚼して飲み込めば、今度は唇がふさがれました。

 そっとわたくしの手からホットミルクが入ったカップが取り上げられて、テーブルに置かれます。

 グレアム様の手がわたくしの後頭部に回って、頭皮をくすぐるように撫でてから、頬に異動します。その間わたくしの唇は塞がれたままで、だんだん頭がぽーっとしてきました。


「ドウェインが書物を探しているから、明日は特に何もする予定がないが……アレクシアは何がしたい?」


 唇を啄みながらささやかれますので、ちょっとくすぐったいです。

 小さく笑ってわたくしが肩をすくめますと、グレアム様も笑って、キスが深くなります。

 こんな時に不謹慎ですが、わたくしはこの時間がとても好きです。

 グレアム様はこうしてわたくしをいっぱい甘やかしてくださるから……、とってもとっても、ふわふわして幸せな気持ちになります。グレアム様大好きです。


「ん……皆さんのお土産を買うのは、まだ早いですから……、お散歩……」

「散歩か。だが、見渡す限り森しかないぞ」

「でも、魔石……たくさん、ありそうだから……」


 グレアム様は魔石がいっぱいあると嬉しいでしょう? わたくしの声にならない言葉をしっかりと受け取ったグレアム様が苦笑なさいました。


「それは俺がしたいことであって、お前がしたいことではない気がするが」

「グレアム様が嬉しいとわたくしも嬉しいです。……それに、一緒にいられるなら、わたくしはどこだって……」


 言葉途中で、グレアム様に唇をしっかりと塞がれてしまいました。

 口づけに夢中になっていると、ふわりと体が宙に浮きます。グレアム様に抱きかかえられたのです。


「もう寝よう、アレクシア」


 とさりとベッドの上に下されて、グレアム様が魔術で部屋の灯りを消しました。

 そしてまた、唇がふさがれます。


 ……グレアム様と過ごすこの時間が、大好きです。だってとてもとても、ドキドキしてそわそわして、そして優しくて幸せな気持ちになるのです。



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