神にとっての蛇足
『転生』というプロセスは神様に転生させられる前に神様によって世界での未練は全て断ち切られる様に運命を操作される所から始まる。
天涯孤独で育ち、惰性で日々を生きてきた貴方はついに世界で生きていく気力を無くす。
それが明日であった。そういう運命であったという。
だから彼女はその前に夢で貴方に接触した。
だが、彼女の運命に干渉する程の魔法はそこが限界であったのだという。
生きる希望を結婚で与え、夢という非現実で頭を軽くさせそうして異世界に渡らせる為に誓わせた。
自分自身が転生の場に居合わせる事ができるかどうかなど神に通じるかも分からないし確証もない。
そしてなにより絶対に失敗出来ない。
ならば、『自分に成り代わる』しかない。
因果も運命も飲み込んでもう一度神様転生をやり直す。
――そういう話であった。
「ん、むっ・・・」
唇を啄むようなキスを受ける。
「全部、ぜんぶ。あげるから・・・私に出来る事、ぜぇーんぶしてあげるから・・・貴方のぜんぶを・・・私にちょうだい・・・?」
目が眩む。
小さな村の小さな古びた教会の全てが壊れてしまった場所で、最後に極上の奉仕を受ける。
命を貰う代わりに命を捧げる様な、そんな奇妙な相互の関係。
呼吸を交換する様に、深く、深く。
貪るように忘れぬ様に、二人だけの命の祈りがそこにはあった。
夢と現が交差している様な途方もない道の、その先が僅かに視えたような。
手を伸ばしてみれば、何かとても柔らかくて、温かくてずっと触れていたい様なそんな至上の感触があった。
体が熱くなっている、頬が赤くなっているだろうか?声に蒸気のような熱が交じり思考が上手く定まらない。
「私と貴方が溶け合う様に、魂の一欠けらだって逃さないから、私は神に祈ります。世界が全て救われる様に、貴方の命を奪う罪を、私は決して忘れはしないから。あぁどうか」
聖句が桜色の小さい唇から鈴の音の様に聞こえ出す。
りぃん、りぃん。
しゃんしゃんしゃん。
彼女は何を唄うのか、彼女は何を許してほしいのか。
命を彼女に捧げる事を承諾した貴方はこの束の間の時間を命の限り受け入れる事にしました。
今まで生きてきた事の意味はここに来ることであったのだと思う様な熱い命の交換が何よりも極上の快楽に思えました。
「好きです、愛しています」
「貴方と会えたことがどれだけ救いになったでしょうか」
「んっ・・・ふっ・・・ふー・・・んん・・・んちゅ・・・っぷはっ・・・!」
「命の代わりだなんて言えませんが、望む限り、願う限りなんでも・・・なんでもしますから。わたし、お嫁さんになりますから」
「今夜だけは・・・貴方の・・・」
「命が終わる瞬間まで」
貴方は自分を愛していますか? 東線おーぶん @akansasu
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