モノ言うKB-in 〜異世界でおっさんがモンスターと警備業始めたら大変なコトになった〜
第16話 第十一条 警備業者は、第五条第一項各号に掲げる事項に変更があつたときは、(中略)所在地を管轄する公安委員会に(中略)届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には(以下略)
第16話 第十一条 警備業者は、第五条第一項各号に掲げる事項に変更があつたときは、(中略)所在地を管轄する公安委員会に(中略)届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には(以下略)
この世は大警備員時代である。一定の条件こそあるが、基本的には誰しもが警備員になれる。その為には新任研修という研修を行い、更にはその後の年度ごとに一回以上の現任研修を行う事が義務付けられている。……が、その実、どの研修も手抜き研修である事が多く、役に立たない研修として有名である。だが、手抜き研修を明ければ、もう立派な警備員なのだから、警備員自体が信用に足る存在とは言えないのが現状……と言うのが分かって頂けるだろう。
「お嬢!はぁ、やっと追い付いたわぁ。はぁ……はぁ……なんでそんなに走るの速いんでっか?」
「わたくし、どうしましょう?サフィアス閣下だけでなく、トリィ様にまで下着を見られてしまいましたわ。こんなんじゃもう、お嫁に行けませんッ!」
「お嬢……嫁に行く気があったコトにウチは驚いてまっせ。でもそれなら、その二人の内のどっちかに嫁に行ったらえぇんちゃいますの?」
「それはそうとエメリルダ!今はトリィ様がいらっしゃらないのですから、その「お嬢」はやめてもらえます?——でも、二人の内、どちらと結婚するのも、障害が大きそうですね……はぁ……」
「ところで今日はトリィのあんさんの元に戻らないつもりでっか?」
「今日は恥ずかしくてもう、お会い出来ませんッ!今わたくしがトリィ様の元に戻ったら、可愛げの無いピンク下着だと思ってらっしゃるに違いありませんっっ!」
「せやかて、王女殿下は従業員なんでっしゃろ?それなのに勝手に飛び出したら、それは職務放棄ですやん。ええん?」
「うっ……そ、それなら一度城に戻って、下着をもっと可愛いのに履き替えてから行きます。さっ!ほらッ!エメリルダ行きますよッ!」
「心配するトコそこなん?ってか、また見せる気かいな?」
「これ……結構な量がありますよ?それにしてもなんでこんなにたくさんの木箱が……?」
「流石にこの量は俺一人じゃ辛いな。ルビアラが来たら手伝ってもらって外に運び出すとしよう。一応、ラピシリアさんも中身を見る時は立ち会ってもらえる?」
「えぇ、それは構いません。わたしがこの家を販売した以上、何かあった時はわたしもトリィ様と一蓮托生ですからッ!」
ラピシリアは何か裏がありそうな言い方をしているが、俺としてはもうラピシリア対策も大分
要するに余計なツッコミは却って自分の立場を悪くする可能性があるから、放置プレイを決め込むコトにしているってコトさ。
「それにしても、こんだけの木箱に何が入ってるんだ?」
「おーい、洗い物は終わったぞ?ところで、その荷物はどうするんだ?アタイが昨日掃除してて、たまたま発見したその木箱。お宝の匂いがするよな?」
「なぁ、ルビアラ……ここには壁があったと俺は思ってるんだが、知らないか?」
ギクッ
「い、いやぁ……アタイは知らない。その木箱の壁が壁に見えてただけしゃないのか?」
「まぁ、それならいいか。それじゃルビアラ。この木箱を全部外に出してもらえるか?」
「それくらいなら、アタイの得意分野だ。任せておけ!」
こうして物置き部屋に詰まっていた木箱は全て取り除かれた。大体300個くらいあっただろう。縦✕横✕高さが50cmくらいある木製の立方体。蓋の部分がちょっと飛び出てるから、厳密には立方体じゃないが、そこは大目に見て欲しい。
「あれ見て下さいトリィ様ッ!」
「部屋の奥に扉?まだ更に部屋があるのか?どれ、開けてみるか……」
「トリィ様、わたしは嫌な予感がします。せめてルビアラ姐さんが外から戻って来てからにしませんか?」
俺はラピシリアの嫌な予感ってのが分からない。謎めいた扉が目の前にあるだけだ。扉を開けたらそこは別世界なんてコトはあり得ないだろう。まぁ、日本に繋がってたりしたら、それはそれで面白そうっちゃ面白そうだが、現実離れし過ぎているからただの妄想だな。
がちゃ
ギイぃぃぃぃ
「なんだ……コレ?」
「トリィ様、どうでした?」
「なんか、扉の向こうに階段が見える。ってか、コレなんだ?ここって家の中だよな?どう見ても家よりも広い空間があるんだが?」
「まさ……か……
この家は事務所としてもう購入したワケで、そんな危険な物件だったなんて俺は知らない。かと言ってこうなった以上、どうすればいいか分からない。
「全ての箱を並び終えたが、これから開封するのか?……って、
「ルビアラ姐さん、どうしましょう?こんな場所に
「まぁ、いいんじゃないか?心配ならアタイが少し中の様子を見て来てやるが?ラピシリアは念の為、騎士団に連絡しておいてくれないか?」
「中の様子を見るって、危なくないのか?」
「なんだオマエ、アタイを心配してるのか?それともバカにしてるのか?」
「心配してるんだよッ!俺は
俺はただの警備員。闘うコトなんて出来ない。資格を取った時に、護身術的なコトは試験内容にあったがそもそも交通誘導に護身術なんて意味は無い。だから試験の時も適当にやっただけだった。試験官も「護身術で試験に落ちるコトは無い」って言ってたから、多分そうなんだろう。
「ルビアラが行くなら、俺も一緒に付いて行く。ラピシリアさんはさっきルビアラが言ってた通りに騎士団の元へ報告しに行ってくれ」
「へぇ?アンタがアタイと一緒に?武器も持って無いのにか?」
「それを言ったらルビアラだって持ってないじゃないか!」
「アタイはちゃんと持ってる。ほら、ここに」
じゃらッ
「なんだよ……それ?いつの間に?」
ルビアラの手の中に突然現れた鎖と、その先にくっ付いた凶悪な鉄球。見た目の重量はかなりありそうだが、どうやったのかはまるっきり分からない。
タネも仕掛けも無い手品にしか見えなかったが、いつもそんな物騒なモノを持ち歩いているのなら、それこそ凶悪犯も顔負けだし、歩く犯罪者と言っても過言ではないだろう。まぁ、本人に絶対に言わないが……。俺も命は惜しいからな。
「これはアタイの専用武器・
「モンスター?そう言えば、サフィアスが前に言ってたな。そうか、この中には本当にモンスターがいるのか……」
「で?どうするんだ?アタイと一緒に来るのか?まぁ、どんなモンスターがいるのか分からないから、一階層をザッと見て回るだけにするが、アタイはとっとと行くぞ!」
こうして俺は恐る恐るルビアラに付いて行くコトにした。この世界のコトを俺はやっぱりまだ理解しきれていない。
だからこそ脚の震えを抑え込んで、ルビアラの後に続いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます