第十話 希望を架ける者
周囲一面を埋める怪物に絶望の表情を浮かべた。どうしようもない絶望が、心を埋め尽くし、その場にへたり込んでしまった。
一体であれだけ苦労した怪物が、雑多の一つでしかないという事実。
アレ以上のモノが一体いるだけならば、どうにでも対処はできた。だが、この数は絶対に無理だ。個に対してなら方法はあったが、全に対しては俺はあまりにも無力だ。どうしようもない。
迫り来る怪物の群れを目にして体が動かなくなる。奴らの鳴り響かせる足音が次第に強くなり、その度自身の死が近づいているのだと、理解してしまう。
「ギャャャアアアアア――――!!!」
怪物の咆哮が鳴り響く、耳に痛いほどの叫び声――死ぬのだと思った。
眼前に迫る怪物はさっきの怪物とは形が違うようだ。爬虫類のような見た目だが、さっきの怪物と違い二足歩行をしており、後脚は大きく、前脚は鋭い爪を持った細い腕だった。
そんなことわかっても、何の意味もないだろ……
無意味な思考に呆れる。前方の一体の姿を確認したところで意味はない、すぐ後ろにわんさか控えている怪物たちもまた見た目は千差万別、一体の情報を確保したところでソイツと戦えるかどうか、その程度の話だ。
逆刃大叢真はただ絶望する。希望の光は何もなく、そこにはただ闇が広がっている――筈だった。
それは夜に光る星々の橋のように美しく、闇夜に輝き闇を照らした。
「さて――仕事の時間のようですね」
そんな声が聞こえたと同時、複数に展開された光りの球のようなものが怪物達にぶつかり、その体を抉り取り全てを一掃していった。その光景はあまりにも残虐に、無残に、とても――幻想的だった。
怪物が次々と絶命していくそんな恐ろしい光景を俺は、美しいと思ってしまった。
別に怪物に対して恨みがあって、それが晴れたとかではない。ただ純粋に、光り輝く光球が怪物達を一掃していくその様子に見惚れてしまったのだ。
地面に尻餅を着いた状態、その光景を魅入るようにずっと眺めていた。
しばらくして周囲の怪物達が一掃されると、前方から一人の少女が歩いてきた。その少女は白髪に碧眼の白人、灰色と白を基調とした服装を身に着け、見て分かる美人。その整った顔立ちは思わず魅入ってしまう可愛らしさがあった。
そんな少女はゆっくりと俺の方へ近づくと、そっと手を伸ばしてきた。
「君、大丈夫かな?」
「え……あ、ああ、なんとか」
俺は伸ばされた手を掴んで立ち上がる。少女は周囲の様子を見た後、あるモノを目にして少し驚いたような表情をした。
「君、少し聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」
「ん? 別に構わないけど」
ズボンについた砂を払い、了承した。
「アレは――君がやったのかな?」
指を指した方向を見ると、そこには先程俺が殺した怪物の死骸があった。
「あ、ああ、一様はな」
「ふん~……」
「…………」
少女は何とも言えない表情をしていた。それは嬉しそうな、興味深そうな、独特の表情でジッとこちらを見つめてきた。
「君、名前は?」
「名前? 俺は、逆刃大叢真……アンタは?」
「私は、クレア・ファーミス・アーゼベルグ……魔術師をやっている者です」
彼女は自身を名を名乗ると同時、まったく戸惑うことなく、自身のことを魔術師とそう言った。
「…………は?」
別たれた希望と絶望の道、彼はただ進むだけ――
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