第9話 二章エピローグ

眩しい光があたしを照らす。

あたし自身が天井へ放った魔力光だった。

明確な光の強さが、くっきりと暗闇を切り取っている。


これはリハーサル? それとも本番?

知ったことじゃない、どっちでも変わらない。


腕を伸ばし、天を仰ぐあたしは視線を意識する。

暗闇から見つめる目だ。


一人は、フウさん。

心配と期待の入り混じったもの。


両手をぎゅっと握って祈るような格好をしている。


一人は、監督。

侮蔑と鋭さと少しの希求。

いつものように壁によりかかって挑むような顔をしている。


もう一人、ここにはいない人を、目を閉じ思い浮かべる。

ここにあの家の子がいたら、どうだろう。

どんな顔をするだろう。


ワクワクした顔で見つめるかも知れない。

ポカンと口を開けて呆然とするかもしれない。

家もあそこに立ちたいと、悔しそうな顔をするかもしれない。


どれでも構わない、なんだっていい。ただし――


――その心に残った「アイドル」は全部上書きしてやる。


どう見ても未熟で有名にはなれそうにないアイドル。あんなものにいつまでも心を奪わせておくわけにはいかない。

一つ残らず消し去る。カケラも残さない。


そのための動きを、歌を、踊りを今からする。


あたしは目を開く。現実の光景が飛び込む、眩しいまでの舞台上。

息を吸い込み、一瞬の間を開け――


第一声を高く、高く、歌い上げた。



二章 了

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