第24話

 ここは変身ヒロインアニメ、ラッキスをテーマとしたレジャー施設であり、休日は多くの家族連れで賑わう。


 子供からすればアニメの主要キャラクターと出会える夢の様な世界。テレビで見ていた時よりもやけに太ったキャラクターが、目の前で必殺技を披露してくれず肩を落とすのは良くある光景だ。


 子供達はいつの世も正直で、パーク内を歩く着ぐるみを見つければ親を置き去りにする勢いで走り出し、かと思えば無言の巨人に恐怖して泣きじゃくりながら戻ってくる。しかし泣いている子供が必ずしもそうとは限らない。


 ベンチでソフトクリームを食べながら別腹を満たしていた二人の前を、べそをかいて一人歩く少年がいた。


真「真っ青。迷子か……あ、おい」


 すぐさま少年と接触してその寂しさに寄り添うマリンとは対照的に、後方からその様子を見守る真九はとあるニュースを思い出し警戒していた。


 それは観光地にて。親と逸れたのであろう子供が一人うずくまっていたところ、新婚旅行に来ていた夫婦が声を掛けた。子供を放ってはおけないと思った夫婦は入り口のスタッフへ預ける為、子供を連れて行くことに。


 歩き出してから程なく、女性が子の名前を呼んだ。子供もその者をお母さんと呼び、安心からか、泣き腫らした跡そのままに再び涙をこぼす。


 親子が再会して一件落着――そう思われたが、子を抱きしめた母親は突如豹変し、大声で夫婦を誘拐犯呼ばわりし始めたのだ。そして警察へ電話を掛けると言い出した時、夫は妻の手を引いてその場から逃げ出した。


 しかし野次馬の妨害に遭い、抵抗も虚しく二人共に取り押さえられてしまう。その後二人は駆け付けた警察に野次馬への暴行で現行犯逮捕され、数日後に釈放された。この一件以降同様の逮捕例が増えたのだが、巷では母親が示談金目当てだったのではと囁かれるように。


 性善を過去に追いやり性悪が根付こうとしている世の動向を、望むと望まざるとに拘らず加速させるこの行為。人々が他者の子を気に掛けなくなっていった原因でもある。


 真九にはそのニュースと目の前の出来事が重なって見えていた。


マ「――ボーっとしてないで。この子、迷子センターまで連れていきましょう」

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