コロン領への準備
ランさんの側にいたジルちゃんが消え、師匠からの手紙を咥えて戻って来た。
「ファン草の中和薬、お前らちゃんと作ってるだろう?出来たらジルに持たせろ。ジルがジロウに届けるようにする。早めに撒いた方がいいな、今また魔物がおかしくなったら面倒だからなあ。ライアンと連絡取って飛竜で撒くのがいいのか?ま、どっちにしろジロウにも話はつけんとな。マックスにも話を通してくれ。私は今忙しいからな。悪い奴らが逃げ回ってんだよ。黒い小さなカサカサ動く奴みたいによ。一匹やっつけたらまた出てくる奴みたいだな」
うん。師匠元気だ。
黒いカサカサ虫用に作った、ねばねばした液を送ってあげよう。
良かった。
私は手紙をランさんに見せ、ジルちゃんに、大瓶に入れた黒い虫用ねばねば液を師匠に届けて貰う事にした。
師匠に使い方と、注意事項を添えたけど、師匠は説明書は読まないから意味ないかもしれない。
ジルちゃんに一応説明をして、ジルちゃんから説明して貰うように頼む。お菓子の箱もひと箱添えるとジルちゃんは消えた。
「黒い虫は嫌だねー。師匠、しっかり駆除してほしいねー。んー。東の森には中和薬三種類位作って、弱い順に上から撒いていってもらおうか?丸薬も撒きたいよね。一週間に一度は撒き続けるかなー?昨日作った分だけじゃ足りないね。師匠達が討伐してるから中毒のひどい魔物は少ないとは思うけどねー。ロゼッタ頑張ろうねー」
キムハン副隊長にも相談すると、「タウンゼンド宰相にお二人から魔鳩を飛ばされて指示を貰った方が宜しいでしょう、私からハワード隊長にも魔鳩を飛ばしておきます」と言われたので、ランさんと一緒に手紙を書き、師匠の手紙も添え、タウンゼンド宰相に魔鳩を飛ばした。
タウンゼンド宰相からは「ハワードをそちらにむかわせます、細かい指示は出しておきます。薬を宜しくお願いします」と返事が来た。
「ハワードってハワード隊長よねー?出世したんでしょー?でも、この間もジロウ隊長のお使い頼まれてたし、今度は宰相からのお使いだし、大変だねー」
キムハン副隊長は眉を少し下げられた。
「ハワード隊長は若くして隊長になられたので、皆さん頼りやすいのでしょうね。ご本人も良く動かれる方ですから。ハワード隊長が来られる時に交代のピットマン隊員も来るでしょう」
私達が薬を作ったり、お客さんの接客をしていると隊員さんを連れたハワード隊長が来られた。
「ラン嬢、ジェーン嬢、問題なく過ごされていますか?タウンゼンド宰相からの伝言と隊員を一人連れてきました。ボンジョウと交代を致します、ピットマンです。二日おきに今後も二人は交代をする予定です。宜しくお願いします」
ハワード隊長が礼をし、ピットマンさんも礼をする。
「はい、どうもー。変わりはないですよー。ランです、ピットマンさん宜しくおねがいしますねー。宰相さんはなんて言ってました?」
私もロゼッタ・ジェーンです、と自己紹介をし、ペコリと礼をする。
「タウンゼンド宰相からは、現場をラン嬢かジェーン嬢に見て貰い、薬を撒きたいそうです。王宮の薬師にも相談したそうですが、魔物に使った例がないので、判断が付きかねると。そこで、薬を作られるどちらかが私かキムハンと一緒に飛竜でジロウ隊長の元へ赴き、薬を撒く相談をして欲しいとの事でした、王宮の薬師長が現場に行きたいと言われてまして、お連れする予定でしたが腰を痛めてしまいまいして。飛竜でお連れする事が出来ません。変わりの薬師もすぐには難しく、お二人に薬師長から手紙が来ております」
手紙には、魔物の生態についてレポートが欲しいので宜しく、ラン嬢がこの間くれたお香をメイド長が買いたがってたぞ、と書いてあった。
ランさん薬師長にも売り込んでるのね。
「薬師長、残念ですねー。ぎっくり腰ですかねー。前もなったって言ってましたから」
「コロン領に行く準備をしていると、クキっとなったそうです。腰に張り薬を張られて大分良くなられたようですが、今も安静にされています。長時間飛竜に乗るのは厳しいかと。他の薬師も今は王都を離れるのが難しく、お二人にどうか、くれぐれも頼むと言われていました」
ハワード隊長からの返事にランさんは考え込みながらラベンダーのお香を出していた。
「んー。ロゼッタどうする?私とロゼッタ、どっちがいいのかな?私が行った方が詳しく見れる?でも、店の事は私の方が回せるかな。ロゼッタの方が使い魔いるし、一緒に付いて行くのは向いてるのかな?どうしようか」
私も考えてみるがどっちがいいのか難しい。
「私が薬を作りますが、魔物に撒いた様子を見るのは鑑定出来るランさんの方が良いかなと。師匠の使い魔がランさんに付いていますし。なので、売り上げ計算の心配はありますが、私が店に残った方が新薬の効果を確認と言う意味では適任じゃないですかね?」
「だよねえ。そうかー。やっぱり私かー。ちょっとロゼッタに行って欲しかったけどしょうがないねー」
「私が行った方がいいんですか?あ、ならば、ランさん。思い切って店閉めて使い魔と隊員さんにお留守番お願いして、私と二人で行きます?それが一番確実ではありますね」
「うー-ん。いいんだけどねー。ハワード隊長、東の森迄飛竜でどれくらい時間かかりますか?王都に往復ってどれくらい飛竜を休めれば出来ますかー?」
「ラン嬢か、ジェーン嬢を乗せてとなると、いつもより少し遅く飛ぶ事になりますね。休憩の時間を入れて六時間程でしょうか。第五だけであれば四時間位です。その日のうちに往復は出来ます。東の森に着き、三時間程休憩出来れば王都に戻れます。毎日の往復は状況的に厳しいですが、飛竜の体力に関しては戦いもなく、飛ぶだけであれば問題はありません」
「ではまず、二人で行ってもいいですか?私かロゼッタが交代で店に戻りましょう。一緒に森と魔物を見て、それから作戦を練りましょうかねー。でも、乗せてくれる方はどうしたらいいですかね?」
「では行きは私が。コロン領の見回りも兼ねて行きますので飛竜はどうせ二頭は出します。お二人でも問題はありません。ジロウ隊長にも直接話がありますし、陛下と宰相殿からの手紙や書類もあるので。キムハンには王都で第二との連携と伝令兼薬局の警護をして貰います」
ハワード隊長は返事が早い。
「おー。ではそれでお願いします」
「ホーソンを二頭目にしましょう。お二人も知っている隊員の方が宜しいでしょう。お一人はホーソンの飛竜に乗って貰えれば大丈夫です。ホーソンは女性隊員の中で一番の飛竜使いです。ラン嬢か、ジェーン嬢が王都にお戻りの時は、ホーソンか代わりの者が乗せます。私はお二人を東の森へ連れて行き、ジロウ隊長に話をした後は、すぐに王都に戻らないといけません。なので、ホーソンを護衛としてそのままコロン領に残します。今は第五は王都待機の状態ですので、私が長く王都を離れられないのですよ」
「成程。忙しい所すみませんが、宜しくお願いしますねー。ロゼッタと私、どっちがハワード隊長と乗るー?」
ランさんが私の方を見ると、使い魔達がてくてくと歩き出した。
フォルちゃんがホーソンさんの横に歩いて行った。アルも私の肩から降りてホーソンさんの方へ行く。ウェルちゃんもホーソンさんの頭に止まった。
「みんなホーソンさんがいいの?私がホーソンさんにお願いしてもいいですか?」
私がそう言うとランさんは黙ってハワード隊長を見ていた。
使い魔達は私の声に頷いている。
「了解です、宰相にすぐに確認を取ります」
ハワード隊長はタウンゼンド宰相に魔鳩を飛ばし、四人で行く事が決まった。
私はとにかく薬を早く作り上げる事になった。
ランさんがハワード隊長とホーソンさんに、「ロゼッタはー、明日には作り上げれますよー」と言ったので、私はとにかく材料を釜に入れ、魔力を貯めランさんに言われた通りの配合で作っていった。
勝手に言うのは止めて欲しいけど、出来ないとも言いたくないので、黙って作る。
出来ますよ。
やってやりますけど。
そんな私の性格までランさんに見透かされてそうで、ちょっと面白くは無い。
私はぷりぷりしながら、薬をひたすら作った。
練習にはなるけど、ランさんに言われた通りじゃ、ただ作ってるだけなのよね。まあ、魔力コントロールの練習にはなるからいいんだけど。
そうやって、夜にはすべてのファン草の中和薬が出来た。
ランさんが、「絶対、人間用もいるようになるから、そっちも大量に作ってマジックバッグに入れておきましょー。あと、臭いスプレーも持っていきましょー。防衛大事ー」と言ったので、本当に大量に薬を作った。
久しぶりにうおおおおお!!と言う感じで薬を作った。
魔力が切れそうな感覚は自分で分かり、ストップって言ってくれる師匠がいなくても問題はなかった。
明日の午前中の早い時間に王宮の飛竜舎に集合となり、今回はウェルちゃんと師匠の使い魔のジルちゃんが店にお留守番をしてくれる事になった。
店にはキムハン副隊長と今回新しく来てくれた隊員さんが交代で見回りをしてくれるらしい。
私の使い魔もピットマンさんに紹介し、何かあったら急に現れるかもしれないけど、驚かないで下さい。とお願いした。
それから私は必要な材料や薬をランさんと手分けをしてマジックバッグに詰め込み、お互いの荷物の準備をする為に家に帰った。
家まではキムハン副隊長が送ってくれ、私は買い物にもより、東の森にどれくらい滞在するのか分からないのでマジックバッグに沢山荷物を詰めて明日に備えることにした。
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