第四章 ドキドキ動画合宿! BANの危機があるからポロリはナシ!

第20話 水着で動画!

「よお、おひとりさまYouTuberのカイカイだ!」


 自撮りスマホの前で、オレはあいさつをする。


「そして!」


「よぉ、おなじくおひとりさまYouTuberのムゥだ」


 夢希ムギが、スマホに手を振った。腰を縛ったTシャツと、デニムホットパンツ姿である。


 お互い、顔は映していない。


 だが、胸元にカメラがいくせいで、夢希のムチムチ豊満さが際立つ。


快斗カイト、ちょっとアングルがキツくない?」


「おおっと、すまん」


 夢希から指摘を受けて、さらに下へとカメラを移動した。ここは要編集だな。


「オレたちは今回、海に来ているぞ」


 今日からオレたちは数日間、合宿をする。

 三日の間、撮れ高を探すのだ。

 

「ムゥよ、今日の意気込みは?」


「思っていたより、夏休みの宿題が進んでよかった」


「だよな!」


 合宿前、オレたちは宿題地獄に追われていた。自由研究がないのが、救いかな? 課題次第では、動画で撮っていたら身バレしてしまう。

 

「今日はひたすら遊んで遊びまくる! 海水浴だろ? バーベキューだろ? 楽しいしかねえぞ!」


「独自で自由研究も、いいかもよ」


「どうだろうな? ムゥ渾身の読書感想文オススメ図書とか、三七再生しかなかったからな」


 夢希が、「あーっ」と肩を落とす。かなり気にしていた様子だ。


「あれはいいっしょ。ホントにオススメの本があるんだから」


「どこまで興味を持ってくれるかは謎だが」


「それにしても、びっくりするくらい人がいないね」


「田舎の海だからな」


 海といっても、あまり流行っていない。ど田舎の海岸で、特に海産物がうまいという。なのに、サーファーも見当たらず。快晴だが、数名の家族連れしか見当たらない。おそらく、お盆に帰郷してきた客だろう。


 星梨セイナおばさんは、親戚と談笑している。


 そう。ここは、オレの母方の祖父母の実家だ。本州と橋で繋いだ島の、またさらに小さい島にある。


 みんな、コンビニや海の家が繁盛しているエリアに行くそうだ。おかげでこちらは客が少ない。


 合宿なら、宿泊施設つきの市民プールという手もあった。そこなら温水プールもあって気持ちよく、ウォータースライダーなどの撮れ高満載なアトラクションがある。が、予算の都合もあるし人が多い。


 ということで、閑散とした海を選ぶことにしたのだ。


「いやー、残念だ。今日はムゥが最強の水着でスタンバイしているってのに」


「そうなのにー。えいっ」


 Tシャツとデニムのホットパンツを、夢希は脱ぎ捨てた。

 オレがアピールすると、夢希がドヤ顔でポーズを決める。

 買い物のときにオレが一番反応した、白のビキニだ。


「どうかな、カイカイ?」


「ああ。太陽に負けねえくらい、眩しいな。肌に日光が反射しているって意味じゃなくてよ、なんだろう、お前自身から光がバーッて出ているみたいな? 撮ってて、ドキドキしてくる」


 クネクネとポーズを決めていた夢希が、急にタオルで自分を隠した。


「どうした?」


「褒めすぎ」


 タオルで顔まで隠し、夢希が後ずさる。


「いやいや、全部隠したらなんも見えねえだろうが。今日は遊び倒すんだから、バーっと行こうぜ」


 カメラを星梨おばさんに渡して、オレたちは波打ち際でビーチサンダルを脱ぎ捨てた。低空飛行で、海へと飛び込む。


 おばさんが、一旦カメラを止めた。


「快斗、遠くへ行ったらダメよ! 藻が生えてるエリアに毒の魚がいるから、刺してくるわよ!」


「うわあああ! 先に言ってくれ!」


 いきなり出鼻をくじかれるとは。浅瀬で夢希と並走して泳ぐ。

 ビーチボールも持ってきていたが、二人では案の定盛り上がらなかったな。


「暑いな」


「休憩しようか」


 まだ昼だと言うのに、お互いにへばってしまう。


「さて、お昼にしましょ」と、おばさんが海の家を指差す。


「待ってました」


 昼食にはやや早いが、海の家で食事をすることにした。

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