第三章 デート? 違う! 遠出だっ!
第13話 エアコンを買いに
「よお、おひとりさまYouTuber、カイカイだ」
「よお、わたしはおひとりさまYouTuber、ムゥだ」
「今日はな、ムゥと一緒に電気街まで出ているぞ」
ちなみにデートではない。これは遠出なんだ。
「実を言うと、エアコンがぶっ壊れたんだよね」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
梅雨の頃になって部屋の大掃除を始めた。その際にエアコンの試運転をしてみたのである。
そしたら、スン……と動かなくなったではないか。しかも、すべての部屋が、だ。
しかしリビングのエアコンは、まだ多少は動く。前の住人が退去するギリギリまで、通電していたからだろうか。
日本のエアコン、丈夫すぎだろ。
だが、電気代などのコスパが悪すぎる。
そこで、すべてのエアコンを買い替えることにした。
店内映像などを映さなければ、外での動画撮影は大丈夫だろうとのこと。あくまでも、オレたちだけを映す。
では、家電量販店へ。
「ネットで買ったほうがおそらく安いよな?」
「配送や、掃除などの専門的なアフターケアを考えると店で買うべきかなーって」
オレの意見に、おばさんは言う。
「それにさ、デート場面を撮りたいじゃん?」
大本の目的は、それか。
「言っておくが、遠出だからな。デートではないから!」
「はいはい。
電車を乗り継ぎ、電気街へ。
なぜか、先にオレだけが「先に行っておけ」と言われた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ひとまず、エアコンだ。
撮影を止めて、量販店へ。
「あー。電気街に来ると、帰ってきたって感じがするわねえ」
同感だ。ここに降りてくると、ホームグラウンドに来たって印象を受ける。
「それより快斗、いうことがあるんじゃない?」
星梨おばさんが、
オレはなるべく、見ないようにしていたのに。
今日の夢希の衣装は、眩しすぎる。
下は黒のミニスカートと白タイツを合わせて大胆に仕上がっていた。なのに、上の露出は控えめで上品と、オタクを殺しに来ている。
グラビアアイドルがよくやる、アンバランス系の衣装だ。
心なしか、夢希も楽しそうに見える。
「なにか、言ってあげなさいよ。この日のために、夢希ちゃんと一緒に服を選んだんだから」
「そうなのか?」
夢希が、外で動画を取りたかったなんて。
「靴も新調した。似合う?」
「ああ。似合いすぎているくらい、いい感じだ」
「もっと言うことある」
モジモジしながら、夢希がクルクルと回りだす。
「……おお。かわいい、な」
「うん。ありがと」
ウキウキしていた夢希の、目が泳ぎだした。
「快斗もいい感じ」
「そ、そうか?」
実はオレの方も、星梨おばさんに言われて外用の服を着ている。それが、給料アップの条件だった。いつも着ている変Tは、封印である。雑誌などを切り抜いた写真を送信してもらい、それに沿ってコーディネートした。
追求するのは、とにかく清潔感のみ。変な冒険はしない。
星梨おばさんからのアドバイスを守り、地味だが小綺麗な格好をチョイスしたつもりだ。
「まああんたにしては、上出来じゃないかしら?」
「そうか? オレは何を着ても、かっこよくならないと思うんだが?」
「自分を低く見ない。あんたはタッパがあるんだし、それなりよ」
もっと自分に自信を持てと言うが……。
「快斗、似合ってる」
「ありがとうな」
夢希にまじまじと見られると、顔が熱くなってきた。
「と、とにかく店に入ろう。暑い」
「そうね。じゃあ夢希ちゃん、行きましょ」
オレたちは、目の前にある大手カメラ屋へ向かう。
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