ムーンショットプロジェクト

埋田丈

ムーンショットプロジェクト

薄氷と知っていながら踏み抜いて割れた破片が溶けるのを待つ


均等に並んだ「続きから見る」の墓場を荒らす共犯者たち


耳元の怒声のような“これ好き”が甘く聞こえてドラムが走る


夜ならばネオンが後押ししてくれる昼の逢瀬は手に汗握る


化粧水プレゼントする思惑がいつかなくなるからと知ってる


悪気ない5分遅れが焼き尽くす 肌を日差しが心を彼が


ラーメンは昨日食べたと切り捨てる嘘が得意な彼の真実


生活が居座ったままの薬指触れたくなくて車道側ゆく


言葉には返事をさせる力ないぶん殴れたらむしろ撃てたら


水出しのコーヒーにしか愛はない 別れ話は冷めたらまずい


同情が新たな恋を生むのなら私の涙は資源ごみだね


見え透いた終電間際の駆け引きを裏切るような俊足だった


角瓶にバニラアイスがトドメ刺す 酔いより美味 が命を救う


図書館よこの世界から消えてくれ君に告げたい返却期限


大胆に切り替えるほど弱くない毛先5ミリのつまらない過去


三十分勘違いした待ち合わせ悪くはないかもうそこに春


片方の耳で聴いている音楽の不完全さを埋める有線


隣からポップコーンを探る手に触れた今こそクライマックス


この先にひとりで暮らす家しかない夜道にせめて電話繋いで


満月は何度撮ってもぼんやりだいっそこの目を君にあげたい

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ムーンショットプロジェクト 埋田丈 @umedazyo

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